胸部レントゲンのポイント総まとめ【5つの記事で解説】 | コキュトレ
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胸部レントゲンのポイント総まとめ【5つの記事で解説】

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  • 臨床検査技師
2021年2月5日 (更新日:2021年11月13日)
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レントゲンの見方が分かりません。どれが正常でどれが異常かもわからないし。どこが分からないかもわかりません。

こんな疑問に答えていきます。

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

研修医になりたての頃の自分を思い返すと、まさにこんな感じでした。レントゲンって初心者にとってはかなり分かりにくいですよね。

今回は、病院で働き始めた人向けに、胸部レントゲンのポイントをまとめました。まとめ記事なので、網羅的に解説しています。

最初のポイントとしてはこれで十分です。この記事を読めば、初学者が働くのに必要なレントゲンの知識が理解できます。

病院でレントゲンを見ることがある人は、ぜひ参考にしてみてください!

  1. レントゲンの撮影方法
  2. 胸部レントゲンの正常所見
  3. 胸部レントゲンの見方・手順
  4. 代表的な疾患のレントゲン像 ~無気肺、胸水、肺炎、心不全、間質性肺炎、COPD、気胸~
  5. 肺癌のレントゲン画像
  6. まとめ

レントゲンの撮影方法

参照:放射線検査説明に関するガイドライン(令和元年8月版)(PDF)

関連記事:胸部レントゲンの撮影方法【放射線技師必見】※正面、側面、斜位

撮影時の服装

撮影の前に、金属は極力はずすようにしてください。

具体的には、ネックレス、湿布、ボタン、エレキバン、ブラジャーのワイヤーなどです。

男性はTシャツなど薄めで、女性はブラジャーを外してください。

正面の場合

後ろ→前と撮影する場合の撮影方法です。

  • 向き:後ろ→前
  • 入射点:第6~7胸椎(肩甲骨下縁)
  • フィルムサイズ:体格に合うように
  • 照射野:肺尖部から肋膜角まで入るように

図で示すとこうなります。

胸部レントゲン、撮影方法

側面の場合

側面での撮影方法のポイントは以下の通りです。

  • 体位:指示がなければ右→左
  • フィルムサイズ:両手を挙げ、左側胸部を撮影台につける
  • 中心線:胸部側面中央

図で示すとこうなります。

胸部レントゲン、撮影方法

斜位の場合

斜位には、右と左のどちらが前かで2パターンあります。

  • 第一斜位:RAO(Right Anterior Oblique position)
  • 第二斜位:LAO(Left Anterior Oblique position)
胸部レントゲン、撮影方法

右が前なら「Right」でRAO、左が前なら「Left」でLAOでよいです。

撮影方法は、RAOでもLAOでも基本的には同じ。以下のようになります。

  • 体位:45°斜位
  • 中心線:胸郭中心(第6胸椎)

側臥位正面の場合

側臥位の場合はこのようになります。

  • 中心線:胸郭中心(第6胸椎)
  • 向き;前→後ろ
  • 上肢:両腕挙上

図で表すとこうなります。

胸部レントゲン、撮影方法

撮影条件

胸部レントゲンの場合の撮影条件です。

  • 管電圧:高圧撮影(120~140kV)
  • 管電流:200mA
  • 撮影時間:0.05秒以下
  • 撮影距離:200cm

さらに詳しく見たいひとは、[胸部レントゲンの撮影方法【放射線技師必見】※正面、側面、斜位]も参考にしてみてください。

胸部レントゲンの正常所見

関連記事:胸部レントゲンの正常所見14選【10年目呼吸器内科医が解説】

正常所見がわかれば、この後の異常所見もわかりやすくなります。

なおレントゲンは奥の深い分野で、本当はいろんなものが見えています。それを全部は必要ないので、重要なもののみ把握してください。

正常レントゲン所見①骨

胸部レントゲン、正常所見

見えるものは下の4つ

  • 鎖骨
  • 肩甲骨
  • 肋骨
  • 胸椎

正常レントゲン所見②気管

胸部レントゲン、正常所見

見えるものは下の3つ

  • 気管支
  • 右主気管支
  • 左主気管支

正常レントゲン所見③心臓

胸部レントゲン、正常所見

見えるものは下の2つ

  • 右心房
  • 左心室

正常レントゲン所見④血管

胸部レントゲン、正常所見

見えるものは下の3つ

  • 大動脈
  • 肺動脈
  • 上大静脈

正常レントゲン所見⑤その他

胸部レントゲン、正常所見

見えるものは下の2つ

  • 横隔膜
  • 胃泡

詳しく見たい人は[胸部レントゲンの正常所見14選【10年目呼吸器内科医が解説】]もご覧ください。

胸部レントゲンの見方・手順

関連記事:胸部レントゲンの正しい見方【結論:撮影条件と読む順番が大事】

写りが悪く、異常を判断しづらいレントゲン写真もよくあります。ここでは診断しやすいような撮影条件を学びます。

結論から言うとこの3つです。

  • 体位:立位がいい
  • 濃度:ちょうどいい濃さ
  • 吸気:十分に息を吸っている

体位:座位や臥位よりも立位がいい

座位や臥位よりも立位での撮影が標準です。

立位では腕をやや広げて撮るので、肩甲骨が外側に見えます。

胸部レントゲン、条件

また、立位では胃泡が見えます。

なお、臥位や座位での撮影では心臓などが大きく写ります。

下の図を見てください。

胸部レントゲン、条件

にこちゃんマークが豆電球に近いほど影は大きくなるし、豆電球から遠いほど影が小さくなります。

これと同じことがレントゲンでも起こります。背中から撮ると、心臓は離れるので小さく映ります。前から撮ると、逆に心臓は大きく映ります。

濃度:濃すぎるとよく見えない

濃すぎるとよく見えません。心臓の裏の脊柱、気管が見えるのがポイントです。

胸部レントゲン、条件

吸気:十分に息を吸っているか

下の図で言うと、左が十分に息を吸っている状態です。

胸部レントゲン、条件

きちんと据えていないと、肺が膨らみ切らずにうまく見えません。

見分け方は、横隔膜が後方第10肋間にあることです。

読影の手順

胸部レントゲンを読んでいく順番です。

特に決まっているわけではないのですが、大事なポイントを挙げるならこうなります。

  • 自分なりの見る順番を決めておく
  • 名前、日付を最初に見る
  • 見落としやすい場所を先に見ておく
  • 肺野は最後でいい

管理人の場合の例を紹介します。ただ、決まったのはないので個人でやり方を決めてみてください。

胸部レントゲン、撮影条件

詳しく知りたい人は[胸部レントゲンの正しい見方【結論:撮影条件と読む順番が大事】]もご覧ください。

代表的な疾患のレントゲン像 ~無気肺、胸水、肺炎、心不全、間質性肺炎、COPD、気胸~

いよいよ、いろんな病気でどう見えるか学びます。今回がレントゲンコースでの山場です。

なお、当サイトは、初心者が動けるようになることを目標にしています。素早く動けるようになるため、ポイントを絞っていきます。

関連記事:胸部レントゲンの異常所見まとめ【保存版】※重要な疾患7つを解説

独自の分け方ですが、わかりやすいように見え方によって分けてみました。

レントゲン、X線、見方

胸水

以下の所見が特徴的です。

  • 下側が白くべたっり
  • CPA鈍
  • 大量になると気管が健側に偏移
胸部レントゲン、胸水

CVA鈍とは以下のようなものを言います。

胸部レントゲン、胸水

無気肺

以下の所見が特徴的です。

  • 白くべったり
  • 無気肺を起こす場所によってバリエーションは多い。
  • 広範囲になると気管、横隔膜などが引っ張られる(胸水との区別点)
胸部レントゲン、無気肺

肺炎

以下の所見が特徴的です。

  • 白くべったり(浸潤影)
  • 気管支が透けて見える(Air Bronchogram)
  • 部位はさまざま
胸部レントゲン、肺炎

Air Bronchogramとは

気管支が透けて見える所見です。

胸部レントゲン、Air Bronchogram

これは、肺炎の影の中でも気管に空気が入っている場合、その気管が黒く映し出されたものです。

心不全

  • 白くべったり(浸潤影)
  • 中心付近に多い(Butterfly shadow)
  • 胸水
  • 心拡大
  • よく肺炎と併発

心不全の画像所見はバリエーションも多く、これらが全部見られないことの方が多いです。肺炎との区別が難しいことも多いです。

胸部レントゲン、心不全

心拡大の目安

  • CTR(心胸郭比)>1/2
  • 心臓が胸郭の半分以上ということ
胸部レントゲン、CTR

間質性肺炎・肺繊維症

  • 粗くまだらな陰影
  • 「網状影」、「粒状影」など

軽症の場合は、正常レントゲン画像との区別が難しいことも多いです。

胸部間質性肺炎、

気胸

  • 肺の外側が真っ黒で、肺紋や血管がない
  • 胸膜が追える
胸部レントゲン、気胸

COPD

  • 肺が膨張
  • 横隔膜が平ら
  • 肺が樽状(樽状胸)
  • 心臓縦長(滴状心)
胸部レントゲン、COPD

以上、たくさんありましたが列挙していきました。

まとめるとこのようになります。

レントゲン、X線、まとめ

詳しく知りたい人は[胸部レントゲンの異常所見まとめ【保存版】※重要な疾患7つを解説]もご覧ください。

肺癌のレントゲン画像

関連記事:肺癌のレントゲン、見逃しやすいパターン5選【研修医必見】

今までは一面に影が広がっているときの所見でした。今回は、腫瘤のお話しです。

腫瘤が見えにくい場所

肺癌などの見逃しがないことがまず大事です。あることに気づいたら、あとは専門医に紹介してください。

見えにくい場所をまとめると、このようになります。

  • 肺尖部
  • 肺門部
  • 肋骨との重なり
  • 心陰影との重なり
  • 横隔膜との重なり

大事なので、図でも示します。

胸部レントゲン、肺癌

さらに詳しく見たい人は、[肺癌のレントゲン、見逃しやすいパターン5選【研修医必見】]も参考にしてみてください。

まとめ

いかがでしょうか。レントゲンを見る手助けになれば幸いです。

レントゲンに関しての記事をこちらにまとめています。気になった方はこちらもご覧ください。

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