レントゲンからどんな疾患があるのか判断できない。
所見は覚えてるけど、今見てるレントゲンがその所見なのか分からない
こういった疑問に答えていきます。
この記事の内容
- 胸水の胸部レントゲン所見
- 無気肺の胸部レントゲン所見
- 肺炎の胸部レントゲン所見
- 心不全の胸部レントゲン所見
- 間質性肺炎の胸部レントゲン所見
- 気胸の胸部レントゲン所見
- COPDの胸部レントゲン所見
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
胸部レントゲンって最初は何が正常で何が異常か、全く分からないですよね。自分も研修医の時はかなり苦手意識を持っていました。
ここでは各疾患のポイントを端的にまとめました。この記事を読むことで見るべき点を網羅的に抑えることができます。
胸部レントゲンが苦手な人はぜひ参考にしてみてください!
- 【悲報】すぐにはレントゲンは読めません
- 胸水の所見:下側がべったり、CPA鈍
- 無気肺の所見:白くべったり、気管などが引っ張られる
- 肺炎の所見:白くべったり、Airbronchogram
- 心不全:白くべったり、Butterfly Shadow、胸水、心肥大
- 間質性肺炎・肺繊維症:「網状影」「粒状影」など
- 気胸:肺紋、血管がない、胸膜線
- COPD:樽状胸、滴状心、横隔膜平坦
- まとめ
Youtubeでも解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!
【悲報】すぐにはレントゲンは読めません
いきなり突き落とすような一言ですが、すぐには読めるようにはなりません。レントゲンは奥が深くて、ある程度見慣れないといけません。
ただ、実はポイントはそこまで多くはありません。各疾患のポイントを、このページだけで完結するようにまとめました。これらを抑えると、読めるようになるスピートは早くなると思います。
正常所見も知りたい人は[正常な胸部レントゲンで見えるもの【14個にまとめました】]も参考にしてみてください。
では、さっそく見ていきます。
胸水の所見
一言で言えば、「下側が白くべったり」です。
胸水が少量の場合は、横隔膜の外の端っこの角度が鈍くなります。
これを「CPA鈍」と言います。CPAとはcostophrenic angleの略称で、胸膜と横隔膜の角のことです。
胸水が大量の場合はこう見えます。
片方が完全に真っ白に見えますね。
後で出てくる無気肺も、ひどい場合は同じように片方が真っ白に見えます。区別は、気管でできます。
- 胸水:気管が健側(黒い方)に押される
- 無気肺:気管が患側(白い方)に引っ張られる
下側が白くべったり
少量の場合:CPA鈍
大量の場合:片肺が真っ白。気管が健側(黒い方)に押される
無気肺
無気肺もざっくりと言えば「白くべったり」見えます。
影の形は無気肺を起こす場所によってバリエーションが多いです。
ひどい場合は同じように片方が真っ白に見えます。先ほどの胸水も同じように、片肺が真っ白になります。区別は、気管でできます。
- 胸水:気管が健側(黒い方)に押される
- 無気肺:気管が患側(白い方)に引っ張られる
下側が白くべったり
影の形は、無気肺を起こす場所によってバリエーションが多い
片肺が真っ白になった場合:気管が患側(白い方)に引っ張られる
肺炎
こちらも、ざっくりと言えば「白くべったり」です。
影の形や部位は、その肺炎次第で変わってきます。
肺炎のレントゲン像のキーワードAir Bronchogram(エア・ブロンコグラム)、浸潤影を解説します。
Air Bronchogram(エア・ブロンコグラム)
これは、肺炎の影の中でも気管に空気が入っている場合、その気管が黒く映し出されたものです。
胸水や無気肺では基本的に見られません(厳密にいえば無気肺では見られることもあります)。
浸潤影
浸潤影は、真っ白でべたぬりに見える影ですが、特に肺の中の影を言います。
無気肺は肺が押しつぶされたもので、胸水は肺の外にたまった水なので、浸潤影とは言いません。また、同じような意味で「Consolidation(コンソリデーション)」と言われることもあります。
白くべったり(浸潤影)
影の形や部位は、その肺炎次第で変わってくる
Air Bronchogram(気管が透けて見える)
心不全
心不全は、他に比べてかなり陰影のバリエーションが多いです。医師の間で意見が割れることも多いです。
特徴的な所見をピックアップします
- 白くべったり(浸潤影)
- 中心付近に多いButterfly shadow
- 胸水
- 心拡大
- よく肺炎と併発
これらが全て見られるわけではありません。
白くべったり見える浸潤影が多いですが、後で出てくる間質性肺炎のように、うすく「すりガラス陰影」のように見えることもめずらしくありません。
CTR(心胸郭比)
心臓が拡大していることの目安になります。
計算方法は下の図の通り
CTR(心胸郭比)>1/2の時、つまり心臓が胸郭の半分以上の時に心拡大とみなします。
注意すべきは、ポータブル撮影の時。立位と違って心臓が大きく映されるので、心拡大と一概には言えません。
白くべったり(浸潤影)
中心付近に多いButterfly shadow
胸水
心拡大(CTR>1/2)
よく肺炎と併発
間質性肺炎
間質性肺炎は今までの「白くべったり」というよりは「白くまだら」に見えます。
影の特徴として「粒状影」「網状影」があります。
粒状影
つぶつぶがたくさん集まったようにみえます。
網状影
その名の通り、影が網状に見えます
また、これらは血管の影と似ています。そのため、軽症の間質性肺炎の場合は、正常レントゲン画像との区別が難しいことも多いです。
白くまだら
粒状影、網状影
気胸
今までと違い、黒く見えます。
気胸は、簡単に言うと「肺に穴が開いてしぼんでしまった状態」です。レントゲンでもしぼんで見えます。
もう少し詳しく言うと下のような特徴があります。
- 胸膜の線が見える
- 肺の外側が真っ黒で、肺紋や血管が見えない
COPD
COPDも今までのように白く見えるわけではありません。簡単にいえば、「肺が膨張」して見えます。
もっと詳しく言うと、
- 横隔膜が平ら
- 肺が樽状(樽状胸)
- 心臓縦長(滴状心)
という風にみえます。また、これらは全てのCOPDで見えるわけではなく、正常のレントゲンとして見えることも多いです。
まとめ
今までのポイントを、端的にまとめます。
- 胸水の所見:下側がべったり、CPA鈍
- 無気肺の所見:白くべったり、気管などが引っ張られる
- 肺炎の所見:白くべったり、Airbronchogram
- 心不全:白くべったり、Butterfly Shadow、胸水、心拡大
- 間質性肺炎・肺繊維症:「網状影」「粒状影」など
- 気胸:肺紋・血管がない、胸膜線
- COPD:樽状胸、滴状心、横隔膜平坦
このポイントを意識しながらレントゲンを見ていけば、慣れるスピードも速くなります。ぜひ、明日からの仕事に活かしてみて下さい!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
そんな人のために、クイズを用意してみました。
>>【クイズ1/2】胸部レントゲン所見(無気肺、胸水、肺炎、心不全、間質性肺炎、気胸、COPD)
>>【クイズ2/2】胸部レントゲン所見(無気肺、胸水、肺炎、心不全、間質性肺炎、気胸、COPD)
ブログよりもっといいのはない?
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- NPPVを書籍で学びたい人は[胸部レントゲンを学ぶのにオススメの本、6選【2021年版】]もご覧ください。
また、キャリアアップで最も大事なのは、働く環境だったりします。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。
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