COPDの患者さんを担当することになったけど、どこを観察すればいいか分からない。
こんな疑問に答えていきます。
この記事の内容
- COPDでの観察項目
- COPDでのケア項目
- COPDでの教育項目
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
前半に看護計画の内容をまとめ、後半にCOPDを簡単におさらいしておきました。
この記事の内容が分かれば、看護で必要なCOPDの知識は一通りマスターできます。
COPDの患者さんに接することがある人は、ぜひ参考にしてみだください。
Youtubeでさらに詳しく解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!
COPDの看護で必要な看護計画:観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP)
ここではCOPDに必要な看護計画を解説します。
一般的な呼吸困難の看護計画とも重なります。これに関しては[プチナースweb 実習に役立つ看護計画 呼吸困難]も参考にしてみて下さい。
特に大事なこと
どの処置にも共通することですけど、特に大事なのは重症化のサインを早く発見することです。
COPDでは、呼吸状態、Vital Signsとなってきます。
呼吸回数はルーチンで測定していいでしょう。
観察項目(OP)
項目を列挙します。
- 呼吸状態(呼吸音、喘鳴、努力呼吸の有無、胸郭、呼吸筋)
- Vital Signsの変化(呼吸回数)、意識状態、顔色、チアノーゼ
- 症状:呼吸困難(持続時間、頻度、程度)、咳嗽、喀痰(色、粘度)
- 検査データ(血液検査、胸部レントゲン、CT)
- 治療内容、治療の効果と副作用
- 精神的誘因(興奮、ストレス)
繰り返しますが、特に呼吸状態、Vital Signs(呼吸回数)は重症になる前触れとして大事です。
ケア項目(CP)
ケア項目で必要なのはこれらです。
- 酸素吸入(必要性や注意事項の説明、マスクの圧迫感などの傾聴)
- 喀痰:排出(体位ドレナージ、スクイージング)、喀痰吸引、加湿
- 薬物療法の確実な実施(内服、薬液吸入、ネブライザー)
- 食事の栄養補給、水分の補給、睡眠確保、身体の清潔、体位の工夫
- 呼吸困難に伴う不安や恐怖心の軽減(傾聴、環境整備など)
- 感染予防(特に薬剤耐性菌が検出されている場合)
特に大事なのは、COPDでは酸素や喀痰。酸素療法ではナルコーシスを予防できたり、排痰では早期治癒につながったり、直接的に患者さんの経過に影響する部分です。
教育項目(EP)
COPDは自宅でも付き合っていく慢性疾患です。患者教育は非常に重要です。
禁煙
禁煙はCOPDでも最も重要な治療です。意欲がある方には禁煙治療など紹介してもよいです。
呼吸様式
効率よく呼吸をするため、口すぼめ呼吸と腹式呼吸が大事です。リハビリでも行います。
排痰法
吸入薬の使用法や、体位ドレナージ、ハッフィングなど効果的な排痰を習得できるよう援助します。
体位ドレナージは[体位ドレナージで痰を出す方法【上手くいかないときの対処法も解説】]で詳しく解説しています。
吸入器の使用方法
入院中から、吸入器が自宅で吸えるように練習しておきましょう。
感染予防
感染は、急性増悪の原因としてはもっとも多いものです。手洗いなど、感染の予防は大切です。
症状が悪化したときの対処法
自宅でも吸入薬で多少の対応はできます。ただ、あまりに症状がつよい時は病院に連絡してみてもらう方がいいでしょう。
COPDを簡単におさらい:定義、病態、症状、身体所見、診断、治療
ではCOPDの内容を簡単におさらいしていきます。
詳しく見たい方は、別の記事[COPDの症状で最も重要なものは何?【結論:労作時呼吸困難】※医療者むけ]も参考にしてみてください。
定義
COPDを一言で平たく言うと、「タバコが原因で肺の気流が悪くなる病気」です。
もう少し正確に表現りたものを、ガイドラインから引用します。
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に関与することにより起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともある。
引用:日本呼吸器学会編集 COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版
病態
COPDでは、気腫性病変(肺胞壁が壊れる)と慢性気管支炎(気管支の炎症)が起こっています。
タバコによって、肺胞の壁がたくさん壊れたり、気管支炎が起こるのです。
これらによって空気の通りが悪くなり、息がうまく吐けなくなって、労作時の呼吸困難が起きます。
症状
一番大事なのは労作時呼吸困難。次に、呼気で呼吸困難が強いこと。
また、COPDの患者さんは呼吸をするのにかなりエネルギーを使ったり、全身に慢性的な炎症を引き起こします。
おおもとは肺の疾患ですが、全身に疾患を引き起こします。
例えば、栄養障害、高血圧、慢性心不全、骨粗しょう症、不安・抑うつ、糖尿病、消化性潰瘍、睡眠時無呼吸症候群などが代表的です。
身体所見
呼吸補助筋の発達、口すぼめ呼吸、樽状胸、Short Trachea(気管短縮)、下腿浮腫、経静脈怒張などです
診断
診断はスパイロメトリーで行います。具体的な基準は以下の通り。
気管支拡張薬後の1秒率(FEV1%)< 0.7
治療
薬物療法としては以下のものがあります。
- 抗コリン薬(LAMA)
- 長時間作用型β刺激薬(LABA)
- 吸入ステロイド(ICS)
最初はLAMAかLABAのみなのが、症状が強くなるとLAMA/LABAの合剤になり、好酸球の増多などあるとICSも追加になります。
吸入療法は、別の記事[ネブライザーの使い方【薬の種類や携帯用吸入器も解説】※看護師向け]も参考にしてみてください。
非薬物治療としては以下のものがあります。
- 禁煙
- 呼吸リハビリテーション
- ワクチン
- 在宅酸素
- NPPV
当初は禁煙やワクチンくらいだったのが、進行とともにリハビリ、在宅酸素、NPPVと上乗せされていきます。
病期の進行とともに、下の図のように治療が強化されていきます。
NPPVは別の記事[NPPVの観察項目は何がある?【設定、モード、注意点も解説】]も参考にしてみてください。
まとめ
いかででしたでしょうか。
このあたりが分かれば、COPDの看護で必要な観察項目はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
もっと気軽に見たい
もっと気軽に見られるよう、Instagramでも投稿しています。
- Instagramでの投稿はこちらからご覧ください。
もっと得意になりたい
さらに詳しく知りたい人は書籍での勉強がオススメです。
COPDの医療者向けの本はこちらがオススメ
COPDの教科書: 呼吸器専門医が教える診療の鉄則 / 倉原優、林清二
まずは、手持ちの呼吸器内科の本があれば、そこのCOPDのページを読むのがいいです。そこからさらに詳しく見たい人には、この本が間違いなくオススメ。
エビデンスを大切にしながらも、吸入薬の使い方など実践的な内容も十分に触れられています。また、しゃべり口調の説明がかなり分かりやすくてオススメです。
さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。
- より呼吸器が学べる職場を見つけたい人は、[看護師転職サイトのランキング【結論:大手3サイト+自分の事情に合わせて】]にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。