NPPVの観察項目は何がある?【設定の仕方、モード、注意点も解説】| コキュトレ
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NPPVの観察項目は何がある?【設定の仕方、モード、注意点も解説】

  • リハビリ職
  • 医師
  • 看護師
  • 臨床工学技士
2020年12月23日 (更新日:2023年3月26日)
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NPPVの観察項目は何がある?

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使い方で特にミスが起こりやすいところを知りたい

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設定やモードが全然わからない

こういった疑問に答えていきます。

この記事の内容

  • NPPVの観察項目
  • NPPVのモード、設定

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

NPPVって、カニューレやリザーバーマスクと違って複雑で分かりづらいですよね。画面をみても文字がいっぱいならんでいるし。

ここでは、NPPVの観察で必要な点や、モードについても解説します。

この記事を読むことで、一人でNPPVの準備や看護ができるようになります!基本的な知識なので、医師など看護師以外の職種にも知っておいてほしい内容です。

NPPVって何って方は[NPPVとは?適応疾患は?何ができる?【10年目の呼吸器内科医が解説】]をご覧ください。

マスクなど使用する時の注意点が知りたい方は[NPPVのマスクフィッティングのコツ【リークや皮膚障害が予防できる】]もご覧ください。

  1. 結論:NPPVの観察項目を列挙しました
  2. 本体:コンセントの接続、回路の接続
  3. 回路:回路内の水の除去、ねじれ、ゆるみなど
  4. 加温加湿器:水量、電源など
  5. マスク:フィッティング、皮膚障害
  6. 患者の状態
  7. 設定
  8. NPPVの準備のしかた
  9. まとめ

Youtubeでも解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!

結論:NPPVの観察項目を列挙しました

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看護ではどこを観察すればいい?

まずは結論から。NPPVの観察項目を列挙しました。

  • 本体:コンセントの接続、回路の接続
  • 回路:回路内の水の除去、ねじれ、ゆるみなど
  • 加温加湿器:水量、電源など
  • 設定:モード、IPAP、EPAP、呼吸回数、FiO2、加湿、気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
  • 患者の数値:モード、IPAP、EPAP、呼吸回数、FiO2、リーク
  • マスク:フィッティング、皮膚障害
  • 患者の状態:意識、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感

特に大事なところは下の図にまとめてみました。

酸素療法、NPPV

ここでは一般的なものを紹介しました。ただ、施設によってルーチンで観察記録する項目もあるはずなので、働く上ではそちらを優先させてください。

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項目を列挙されただけで、それぞれを詳しく教えて!

それでは、詳しくずつ見ていきます。

本体:コンセントの接続、回路の接続

コンセントは、本体と加湿器の2つあります。よく、片方のみになっているというインシデントもあるので要注意。

回路の接続が外れていないかも注意。

あとは、バクテリアフィルターがついているか確認してください。フィルターは定期的な交換が必要です。変色などないか観察してください。

酸素療法、NPPV

回路:回路内の水の除去、ねじれ、ゆるみなど

回路内の水が患者さんに流れ込むとムセてしまいます。定期的に排液してみてください。

酸素療法、NPPV

加温加湿器:水量、電源など

加温加湿器はトラブルの多いところです。

以下の内容に特に注意してください。

  • 注射用水を点滴の要領で流す
  • 空気孔をあける
  • 電源をいれる
  • 温度は体温くらい
酸素療法、NPPV

マスク:フィッティング、皮膚障害

マスクフィッティングはNPPVでは非常に大事ですが、深い内容なので[NPPVのマスクフィッティングのコツ【リークや皮膚障害が予防できる】]で改めて解説します。

NPPVは患者さんの吐いた息を回収する部分がないので、呼気ポートを必ず1か所つけることは意識してください。

酸素療法、NPPV

0か所や2か所ではダメで、必ず1か所です。

患者の状態

以下にNPPVで大事な項目を列挙します。

呼吸呼吸数、SpO2
呼吸パターン、NPPVとの同調性
呼吸音の聴取
呼吸困難の有無
血液ガス、レントゲン
循環心拍数、血圧、心電図変化
尿量測定(水分バランス)
意識意識レベル
せん妄の有無
自覚症状、訴え
皮膚腹部膨満感、悪心・嘔吐の有無
腸蠕動音
排便
消化器マスクフィッティングの状態
圧迫され過ぎていないか
発赤、潰瘍など
眼の充血、乾燥の有無

設定

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NPPVの設定が複雑でわからない

一番難しいところだと思います。ここではあまり深入りせずに、大事なところピックアップして、端的に解説します。

大きく分けると、モード、設定値、アラームの3つ。それぞれ見ていきます。

モード

NPPVのモードは、「患者さんが呼吸するタイミングをどう決めるか」という視点で分かれています。

で、患者さんが呼吸するタイミングの決め方ですが、以下の3つに分かれます。

  • 患者さんが決める
  • 機械が決める。
  • 普段は患者さんだが、息がなければ機械が決める。

そして、それぞれこのようなモードになっています。

  • 患者さんが決める:CPAP、Sモード(PSV)
  • 機械が決める:Tモード
  • 普段は患者さんだが、息がなければ機械が決める:S/Tモード

CPAP

機械からは、一定の圧が流れているだけです。吸うときは、完全に自分の力で吸います。

Sモード(PSVモード)

CPAPと違い、患者さんが吸った時に追加で圧をかけて、呼吸を助けてくれます。タイミングは患者さんに合わせてくれます。

Tモード

患者さんの呼吸のタイミングは無視して、機械が自分のタイミングで空気を送ります。
例えば、5秒に1回といった具合。

S/Tモード

普段は患者さんですが、息がなければ機械が決めます。

参照:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2版)

設定値

IPAPとEPAP

端的に言えば、このような違いです。

  • IPAP:吸うときにかける圧
  • EPAP:吐くときにかける圧

図で見るとこうなります。

NPPVは、患者さんが息を吐くときにも、患者さんの方向へ空気を送っているのです。

そして、「IPAPとEPAPの圧の差が大きいほど、一回換気量が増える」というのはぜひ知っていて下さい。

数字の目安は、一番弱い設定で以下の通り

  • IPAP:8cmH2O
  • EPAP:4cmH2O

呼吸状態が悪ければ、ここから圧を上げていくことになります。

FiO2

吸入酸素濃度で、実際に患者さんが吸っている酸素の濃度です。

リーク

NPPVではここが大事です。

患者さんは、吐いた息をマスクの隙間から外に出しています。この空気の量が、リーク(漏れ)です。

だいたい20~60L/分が標準的なところ。

多すぎてもダメですが、少ないと息が吐けないためもっとダメです。

ここは、[NPPVのマスクフィッティングのコツ【リークや皮膚障害が予防できる】]に詳しく書いたので参考にしてください。

ライズタイム

これはあまり重要ではありません。

EPAPからIPAPに何秒で到達するかという数字です。
短ければあっという間に吸うし、長ければゆっくり吸います。

アラーム

主なところをリストアップしておきます。

  • 気道内圧上限:患者と機械の呼吸は合っているか?(ファイティング)
  • 気道内圧下限:マスクが外れていないか?回路の破損はないか?
  • 分時換気量上限:過換気になっていないか?
  • 分時換気量下限:患者の換気量の低下?していないか?マスクがずれていないか?
  • 無呼吸:呼吸停止していないか?もしくはマスクが外れていないか?

NPPVの準備のしかた

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先輩に、急に準備をしてと言われたけど、やり方が分からない。

今までの内容がわかっていたら、準備も難しくありません。ここで見ていきます。

回路の準備のしかた

NPPVは下の要素によって構成されます。

  • 本体
  • 短い蛇腹(回路)
  • 加温加湿器
  • 長い蛇腹(回路)
  • マスク

そして、この図の順になるように回路を組んでいきます。

酸素療法、NPPV

患者さんに導入するコツ

回路を組めば、いよいよ患者さんに装着します。

ただ、NPPVは患者さんの協力が必要です。NPPVが嫌われたら継続できなくなるので、しっかり説明しながら進めます。

NPPV、酸素療法

管理人の例ですが、かなり説明しながら行います。

「今からつけますね」

(マスクをかるく顔に近づけ)
「こんなふうに風が当たりますよ」

(マスクをかなりゆるく装着して)
「大丈夫ですか?よければ、
まだゆるいのでしめていきますね。」

そのほかのポイントとしては、以下の通りです。

  • 圧の設定は低めから開始
  • 顔に合ったマスクのサイズを選ぶ
  • マスクは無理やり押し付けない
  • バンドををきつく締めすぎない
  • リークは20~60L/minが目標

マスクの種類など、始め方は[NPPVのマスクフィッティングのコツ【リークや皮膚障害が予防できる】]でも解説しています。

まとめ

それでは、内容を振り返ります。

観察項目は以下の通り。

  • 本体:コンセントの接続、回路の接続
  • 回路:回路内の水の除去、ねじれ、ゆるみなど
  • 加温加湿器:水量、電源など
  • 設定:モード、IPAP、EPAP、呼吸回数、FiO2、加湿、気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
  • 患者の数値:モード、IPAP、EPAP、呼吸回数、FiO2、リーク
  • マスク:フィッティング、皮膚障害
  • 患者の状態:意識、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感

モードで大事なのは以下のものでした。

  • 患者さんが決める:CPAP、Sモード(PSV)
  • 機械が決める:Tモード
  • 普段は患者さんだが、息がなければ機械が決める:S/Tモード

設定で特に大事なのはこの2つでした。

  • IPAP:吸うときにかける圧
  • EPAP:吐くときにかける圧

このあたりを知っていたら、NPPVの基礎的な知識はばっちりです!ぜひ明日からの仕事に活かしてみて下さい!

NPPVの適応疾患や機能が知りたいかたは[NPPVとは?適応疾患は?何ができる?【10年目の呼吸器内科医が解説】]、マスクなど使用する時の注意点が知りたい方は[NPPVのマスクフィッティングのコツ【リークや皮膚障害が予防できる】]もご覧ください。

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。
>>NPPVの使い方や観察項目を解説【クイズで学ぶ】

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ブログよりもっといいのはない?

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勉強会での準備が大変

勉強会の準備って、とにかく大変ですよね。準備自体が自分のためになるのは分かるけど、たいてい10時間以上かかったりするし。このブログ記事の元ネタのパワーポイントをnoteでダウンロードできます。

以上、参考になればうれしいです。明日からの聴診にぜひ活かしてみてください!