体位ドレナージで痰を出す方法【上手くいかないときの対処法も解説】 | コキュトレ
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体位ドレナージで痰を出す方法【上手くいかないときの対処法も解説】

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  • 看護師
2021年4月24日 (更新日:2021年8月6日)
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体位ドレナージと指示が出たけど、やったことないしどうしていいか分からない。

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体位ドレナージをしてみたけど、うまくいかない。

こういった疑問にお答えします。

今回の記事の内容

  • 体位ドレナージのやり方
  • 体位ドレナージの禁忌
  • 体位ドレナージでうまく

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

体位ドレナージとは、重力による排痰を行うことです。痰のある場所を上に持ってきます。

ただ、やったことない看護師さんがいきなりやってと言われることも多いのではないでしょうか。

それに、慣れないうちは、これで合っているのか手探りという人も多いはず。

自分も最初はそうでした。しばらくして、ちゃんとわかってなきゃと思い勉強をして、コツとかを学んでいきました。

ここではそのやり方を見ていきます。

そして、うまくいかないときの対処法も解説します。

これをみれば、体位ドレナージだけじゃなく痰をうまく出す方法が理解できます。

病棟でこれらに困ったことがある人は、ぜひ参考にしてみてください!

  1. 体位ドレナージで痰を出す方法【結論】
  2. 体位ドレナージの禁忌
  3. 体位ドレナージでもうまく痰が出ない場合
  4. まとめ

体位ドレナージで痰を出す方法【結論】

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さっそく、やり方を教えてほしい

では、本日の結論であるやり方を見ていきます。

準備

まず、これらの準備を行います。

  • 食事から2時間以上経っていることが望ましい
  • 胸部CTや聴診で痰の位置を確認
  • 点滴ラインやチューブは処置中に抜けないように整理しておく
  • 本人の説明

とくに経腸栄養の患者さんで直後に体位を変えると、嘔吐や誤嚥につながりかねません。ここは注意しましょう。

体位ドレナージ

痰がたまっている場所を上に持ってきます。

体位ドレナージ

基本的な姿勢はこれら。

  • 仰臥位
  • 腹臥位
  • 側臥位
  • 45°前方に向けた側臥位
  • 45°後方に向けた側臥位

図ではこうなります。

体位ドレナージ

これに、状況に応じてベッドの頭を上げたり、足を上げたりします。

継続時間は10~15分が目安。

では、具体的に痰の溜まっている場所に対してどんな姿勢をとるか、見ていきましょう。

肺尖部(肺の上の方)に痰がある

仰臥位+ベッドの頭を上げます。

腹側に痰がある

  • お腹側に痰が溜まっているので、基本的には仰臥位です。
  • より右に痰があれば、45°後方に傾けた左側臥位にします。
  • より左に痰があれば、45°後方に傾けた右側臥位にします。
  • 状況に応じて、ベッドの足を上げるといったこともします。

背側に痰がある

  • お腹側に痰が溜まっているので、基本的には仰臥位です。
  • より右に痰があれば、45°前方に傾けた左側臥位にします。
  • より左に痰があれば、45°前方に傾けた右側臥位にします。
  • 下葉に痰が溜まっているようなら、ベッドの足を上げるといったこともします。

ドレナージ後のアセスメント

もし口元に痰が出てきたら、吸引したり、患者さんにせき込んでもらいましょう。

体位ドレナージが終わったら、聴診やバイタルサインを測定し、うまくできたか評価しましょう。

食後でないか注意
チューブ類に注意
基本体位は、「仰臥位・腹臥位・側臥位・45°前方に向けた側臥位・45°後方に向けた側臥位」に「頭か足を上げる」

体位ドレナージの禁忌

禁忌としてはこれらがあります。

  • 頭頸部の外傷
  • 肋骨骨折
  • 脊髄損傷の急性期
  • 術後の不安定期
  • 循環が不安定
  • 頭蓋内圧が20mmHg以上
  • 精神不安定

外傷、循環動態などが大きな原因です。

体位ドレナージでもうまく痰が出ない場合

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実際にやってもうまくいかない

そうですね、うまく出ない場合も多々あります。

本当に難しい場合はありますが、対応を変えると痰が出やすくなることもあります。

これらの原因がないか、探ってみてください。

体位ドレナージがうまくいかない原因

体位ドレナージ

加湿や呼気が足りない。

体位ドレナージは万能ではないんです。排痰には、「排痰の3要素」を言われる①湿度、②重力、③呼気量と呼気の速度という要素があります。

体位ドレナージはその中でも重力の部分。例えば、カピカピにこびりついた痰は重力でも動きにくいです。息の浅い人は、より強く息を吐くと出やすくなります。

具体的にはこう言った方法を組み合わせます。

  • 湿度:去痰薬、加湿
  • 呼気量と呼気の速度:咳嗽介助、スクイージング、ハフィング

スクイージングやハフィングは[スクイージングで痰を出す方法【上手くいかないときの対処法も解説】]も参考にしてみてください。

痰が肺の奥というより喉元にきている。

ここでイメージしてほしいのが、残り少ないマヨネーズ。出しやすくするため、冷蔵庫の中で逆さにして置いておきませんか?

体位ドレナージ

この逆さにするのが、体位ドレナージやスクイージング。一方、出し口に集まったマヨネーズを一気に出すのが、咳嗽や喀痰吸引やハフィングです。

なので、喉元にある痰は、体位ドレナージよりも咳嗽や喀痰吸引がよい方法です。

これらも組み合わせてみましょう。

体位ドレナージの方法がイマイチ

一方、体位ドレナージ自体の方法がイマイチな場合もあります。

例えば、こういったもの。

  • 痰のある場所が十分に上にできていない
  • 時間が短い

特に痰の場所が上にできていないというのはよくある原因。側臥位が60°くらいやるべきところを、20°くらいしかできていないとかは多いです。

痰がうまく出ないときは、①加湿や咳嗽やスクイージングを併用する、②喉元にある場合は吸引を行う、③体位ドレナージの角度が十分できているか注意

まとめ

それでは、内容を振り返ります。

  • 基本体位は、「仰臥位・腹臥位・側臥位・45°前方に向けた側臥位・45°後方に向けた側臥位」に「頭か足を上げる」
  • 食後でないか、チューブ類が絡まっていないか注意
  • 禁忌肢に注意
  • 痰がうまく出ないときは、①加湿や咳嗽やスクイージングを併用する、②喉元にある場合は吸引を行う、③体位ドレナージの角度が十分できているか注意

このあたりが分かれば、体位ドレナージはバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

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もっと気軽に見たい

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もっと得意になりたい

さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。

この記事は[Up TO Date / OVERVIEW OF REHABILITATION IN PALLIATIVE CARE]も参照して書きました。