間質性肺炎の看護で必要な看護計画:観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP) | コキュトレ
間質性肺炎コース

間質性肺炎の看護で必要な看護計画:観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP)

  • 看護師
2021年6月15日 (更新日:2023年9月16日)
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間質性肺炎の患者さんを受け持つことになったけど、看護ではどのあたりを注意したらいい?

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間質性肺炎って小難しくて理解不能

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ビシっとかっこよく対応したい

こられの疑問に答えます。

この記事の内容

  • 間質性肺炎の看護計画
  • 間質性肺炎の概要を説明

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

普通の細菌性肺炎とかとくらべて、間質性肺炎って何が起きているか分かりにくいですよね。本を見ても、IPFとか分かりにくい英語が並んでるし。

ここでは主に看護で必要な情報を解説します。看護計画も取り上げますが、記事の後半では看護に必要な間質性肺炎の基礎知識も見ていきます。

この記事を読めば、患者さんがどんな経過になるのかくっきりとイメージできるので、かなり看護がしやすくなります。

普段呼吸器の病棟で働いているって人は、ぜひ参考にしてみてください。

  1. 間質性肺炎の看護で必要な看護計画:観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP)
  2. 間質性肺炎についておさらい:間質性肺炎とは、症状、検査、経過、治療、急性増悪
  3. まとめ

Youtubeでさらに詳しく解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!

間質性肺炎の看護で必要な看護計画:観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP)

ここでは間質性肺炎に必要な看護計画を解説します。

一般的な呼吸困難の看護計画とも重なります。これに関しては[プチナースweb 実習に役立つ看護計画 呼吸困難]も参考にしてみて下さい。

特に大事なこと

どの処置にも共通することですけど、特に大事なのは重症化のサインを早く発見することです。

間質性肺炎では、呼吸状態、Vital Signsとなってきます。

呼吸回数はルーチンで測定していいでしょう。

観察項目(OP)

項目を列挙します。

  • 呼吸状態(呼吸音、喘鳴、努力呼吸の有無、胸郭、呼吸筋)
  • Vital Signsの変化(呼吸回数)、意識状態、顔色、チアノーゼ
  • 症状:呼吸困難(持続時間、頻度、程度)、咳嗽、喀痰(色、粘度)
  • 検査データ(血液検査、胸部レントゲン、CT)
  • 治療内容、治療の効果と副作用
  • 精神的誘因(興奮、ストレス)
  • 繰り返しますが、特に呼吸状態、Vital Signs(呼吸回数)は重症になる前触れとして大事です。

ケア項目(CP)

ケア項目で必要なのはこれらです。

  • 酸素吸入(必要性や注意事項の説明、マスクの圧迫感などの傾聴)
  • 喀痰:排出(体位ドレナージ、スクイージング)、喀痰吸引、加湿
  • 薬物療法の確実な実施(内服、薬液吸入、ネブライザー)
  • 食事の栄養補給、水分の補給、睡眠確保、身体の清潔、体位の工夫
  • 呼吸困難に伴う不安や恐怖心の軽減(傾聴、環境整備など)
  • 感染予防(特に薬剤耐性菌が検出されている場合)
  • 特に大事なのは、COPDでは酸素や喀痰。酸素療法ではナルコーシスを予防できたり、排痰では早期治癒につながったり、直接的に患者さんの経過に影響する部分です。

教育項目(EP)

間質性肺炎は自宅でも付き合っていく慢性疾患です。患者教育は非常に重要です。

禁煙の必要性

呼吸症状が悪化してしまいます。意欲があれば禁煙外来も勧めていいでしょう。

体に負担のかかりすぎないよう過度な運動は控える

過労といった身体に対する負担を減らすような注意が必要です。呼吸困難が強い時は無理に行動しないように説明します。必要な時は遠慮せずに周りに手伝ってもらってもいいでしょう

酸素療法の必要性

症状が進むと在宅酸素が必要になることがあります

薬の使用方法や副作用

ステロイドの副作用には高血糖、高血圧、体重増加などあります、また、ピレスパ®の副作用には光線過敏症、消化器症状があります。帽子や日焼け止めクリームを使用したり、皮膚露出を控えるといった注意が必要です。

感染予防

感染は、急性増悪の原因の中で多いものです。手洗いなどの感染の予防はしっかししましょう。

症状が悪化したときの対処法

急性増悪すると、自宅で対応は困難です。家で我慢しすぎず病院に連絡してみてもらうように伝えましょう

終末期の場合

特に特発性肺線維症は予後不良で、徐々に進む病期です。

急性増悪するとそのまま終末期を迎えることも多いので、病状が安定している時期に、家族も含めて相談しておくことが望ましいです。

間質性肺炎についておさらい:間質性肺炎とは、症状、検査、経過、治療、急性増悪

看護計画と挙げたけど、どんな病気か分からなければ対応もしにくいですよね。ここでは間質性肺炎を簡単に説明します。詳しくは以下の記事で説明しているので、参考にしてみてください。

間質性肺炎とは

間質とは、肺の中でも肺胞壁や血管を指します。空気を含む肺胞とは区別します。

通常の細菌性肺炎が肺胞の中に細菌が増殖してしまうような病気なら、間質性肺炎は間質が何らかの形でダメージをうけてしまう病気です。

分類

ガイドラインを見ると、こんな分類がされています。

  • 特発性肺線維症(IPF)
  • 非特異性間質性肺炎(NSIP)
  • 特発性器質化肺炎(COP)
  • 急性間質性肺炎(AIP)
  • 呼吸細気管支炎―間質性肺疾患(RB-ILB)
  • 剥離性間質性肺炎(DIP)

これらを全部覚える必要はありません。実際によく見るのは、IPF、NSIP、COPの3つです。知っているに越したことはないのかもしれませんが、看護では必須ではないと言えます。

ただ、この3つは経過が大きく変わってきます。これは後で解説します。

間質性肺炎の症状

  • 呼吸困難
  • 乾性咳嗽

この2つが特徴的です。間質なので痰はあまり出ず、乾性咳嗽が多いです。

間質性肺炎での検査所見

血液検査

  • KL-6
  • SP-D、SP-A
  • LDH

これらが上がりやすいです。

胸部レントゲン

  • 粗くまだらな陰影
  • 「網状影」「粒状影」など

軽度の場合は、正常所見と区別がつきづらい場合も多いです。

胸部CT

  • すりガラス陰影
  • 蜂巣肺
  • 浸潤影

これらが特徴的です。胸部CTでの見え方は患者さんの経過と関わるのですが、それはこの次に説明します。

間質性肺炎の経過

先ほど間質性肺炎の分類として説明した、IPF、NSIP、COP。この3つではIPFが一番経過が悪く、COPは一番良好です。また、この3つはCTの見え方も変わります。具体的には下の表のようになります。

IPFNSIPCOP
胸部CT蜂巣肺すりガラス陰影浸潤影
予後不良中間良好

蜂巣肺

IPFにあたります。

蜂巣肺では、肺胞の構造物が大きく壊れて、線維化してしまっている状態です。本来は非常に小さい肺胞が置き換わった線維が、CTでハチの巣のように見えるっていうイメージでいいでしょう。

蜂巣肺では肺として機能している部分はとても少ないです。また一度線維に置き換わると正常な肺胞には戻らず、予後は不良です。具体的には、診断からの生命予後が2~5年程度と言われています。

浸潤影

COPにあたります。

浸潤影はCTでべったりしてみえる所見です。肺胞の中に液体成分や器質化した成分が貯まっていて、そのためCTではべったりと見えます。肺胞の中がメインで間質自体は生きているので、しっかり治療をすれば元に戻ります。

再発しやすいという側面もあるのですが、生命予後は良好です。

間質性肺炎の治療

  • IPF:抗線維化剤
  • NSIP:ステロイドが基本。免疫抑制剤を併用することも。
  • COPD:ステロイド

このあたりです。

抗線維化剤は、ピレスパ、オフェブといったものがあります。免疫抑制剤シクロフォスファミド(エンドキサン™)、アザチオプリン(イムラン™)、シクロスポリン(ネオーラル™)があります。

ステロイド

間質性肺炎の治療では一番多く使われます。

よくあるのが、プレドニン0.5mg~1mg/kg/日を何か月かかけて徐々に減らしていくというもの。

例えば体重50kgの人なら、プレドニン25mgとか50mgとかです。これを、1週間に5mgとか、2週間に5mgとかっていうペースで減らしていくっていうのが多いです。

ただ量は絶対的なものでないので、患者さんごとに変わってきます。

ステロイドは副作用も多いです。高血糖、高血圧、感染、消化管潰瘍、骨粗しょう症、白内障、緑内障、皮疹、中心性肥満などです。

抗線維化剤:ピレスパ、オフェブ

特にIPFで使われる内服薬です。ただ、完全に治すというよりは、悪化のスピードを落とすという目的。

また、かなり薬価が高いです。3割負担なら1か月6万円前後、1割負担でも2万円前後かかります。

それぞれの副作用は次の通り

  • ピレスパ:光線過敏症、食欲低下、嘔気、肝機能障害、白血球減少
  • オフェブ:肝機能障害、嘔吐、下痢

間質性肺炎の急性増悪

間質性肺炎は基本的には慢性的な疾患です。しかし、感染などを契機に急に悪くなることがあります。

治療はステロイドや抗菌薬。ステロイドではパルス療法を行うことも多く、ソルメドロール1000mgを3日間投与行うのが標準的です。

経過は、間質性肺炎の分類によって変わってきます。IPFではかなり予後不良で、一度急性増悪を起こすとそのまま終末期に陥るひとも多いです。

そのため、例えば酸素化が悪い時に挿管下の人工呼吸を行うかは、常に問題になります。もともとの肺自体が改善しない可能性も高いからです。なるべくなら、元気な時から患者家族交えて声を掛けておくのが理想的です。

まとめ

いかででしたでしょうか。

このあたりが分かれば、間質性肺炎で必要な観察項目はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

コキュトレではクイズも用意しています。

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