気管支喘息での発作の強度ってどう判断する?
気管支喘息での発作時はどうやって治療すればいい?
こういった疑問を解説します。
この記事の内容
- 気管支喘息での発作の強度判定
- 気管支喘息の発作の治療法
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
ここでは気管支喘息の発作の強度から、救急外来や入院中に発作を起こした患者さんの対応方法を解説します。
この記事を読めば、発作時の対応は一通りできるようになります。網羅的に書いたので、ぜひ参考にしてみてください。
Youtubeでもさらに詳しく解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!
気管支喘息の発作の強度を判断する方法
結論から言うと、下の表です。
出典:「喘息予防・管理ガイドライン2018」
異なる発作強度の症状が混在するときは強い方とします。
ガイドラインでは、それぞれの強度に応じた治療法が書いています。
ただ、実はどの強度でも最初にやることは同じなんです。
どんな風に同じなのか教えて
では、次から解説していきます。
救急での喘息発作の対応の流れ【治療薬も紹介】
全体像はこんな感じ
- ポイント1:状態を見る(発作強度の分類)
- ポイント2:身体所見や胸部レントゲンで他の疾患を除外
- ポイント3:SpO2をチェック。90%をキープする
- ポイント4:初期治療はまず短時間作用型β刺激薬(SABA)
- ポイント5:改善が見られなければ重症度に応じて追加治療を行う
- ポイント6:問診で普段の状況も把握する
1つずつ見ていきます。
ポイント1:状態を見る(発作強度の分類)
具体的には、さきほど[気管支喘息の発作の強度]で解説した表です。
しかし、忙しい救急外来で表に当てはめるのはなかなか大変。なので、下の方法で判断するのが簡単です。
- 横になれる→小発作
- 横になれない→中発作
- 意識障害、SpO2<90→大発作
ポイント2:身体所見や胸部レントゲンで他の疾患を除外
除外すべきは、急性心不全、肺炎、気胸、無気肺などです。
特に急性心不全、COPDは、喘息と同じくウィーズ(Wheeze)を来す疾患でややこしい。
主に下のように判断します。
症状 | レントゲン、CT | |
急性心不全 | 下腿浮腫、頸静脈怒張 | 胸水、バタフライシャドー |
COPD | 呼吸補助筋の発達、樽状胸 | 樽状胸、滴状心 |
肺炎 | 膿性痰 | 浸潤影 |
気管支喘息では、ウィーズ(Wheeze)以外にこれらの身体所見やレントゲン所見が見られません。
注意点として、COPDは喘息と併発していることも多いです。ただ、初期治療はおおむね同じなので、迷うことがあってここはOKです。
他の疾患は以下の関連記事で詳しく書いています。参考にしてみてください。
- ウィーズについて[ウィーズとストライダーはどんな音?原因疾患は?【呼吸音は4種類で十分】]
- レントゲンについて:[胸部レントゲンの異常所見まとめ【保存版】※重要な疾患7つを解説]
- COPDの症状:[COPDの症状で最も重要なものは何?【結論:労作時呼吸困難】※医療者むけ]
ポイント3:SpO2をチェック。90%をキープする
酸素化が保てなかったら、酸素を吸ってもらいます。喘息に限らずですが、SpO2は最初から測定して、低ければ酸素の吸入を始めます。
ポイント4:初期治療はまず短時間作用型β刺激薬(SABA)
発作の強度がどうであれ、最初の治療は短時間作用型β刺激薬(SABA)です。具体的には以下のもの。
メプチン™エアー | 2吸入 20分あけて3セットまで |
サルタノール™インヘラー | 2吸入 20分あけて3セットまで |
メプチン0.3ml+生食3ml | ネブライザー吸入 20分あけて3セットまで |
ベネトリン0.3ml+生食3ml | ネブライザー吸入 20分あけて3セットまで |
ポイント5:改善が見られなければ重症度に応じて追加治療を行う
以下のものが選択肢です。
- ステロイドの全身投与
- テオフィリン
- アドレナリン
- マグネシウムの点滴
特に重要なのが、ステロイドとアドレナリンです。それぞれ見ていきます。
ステロイドの全身投与
以下が具体的な処方例です
- ヒドロコルチゾン(コートリル™)200~500mg 点滴静注、以後6時間ごとに投与
- メチルプレドニゾロン(ソルメドロール™)40~125mg 点滴静注、以後6時間ごとに投与
- デキサメタゾン(デカドロン™)4~8mg 点滴静注、以後6時間ごとに投与
- ベタメタゾン(リンデロン™)4~8mg 点滴静注、以後6時間ごとに投与
ただし、絶対的なものでないので、患者によって容量や投与期間など調整してください。
ステロイドは即効性はないので、以下のテオフィリンやアドレナリンも考慮します。
テオフィリン
具体的な処方例が以下の通りです。
- ネオフィリン™6mg/kg+生食200~250mlを点滴静注
- 最初の1/2量を15分程度、残量を45分程度で投与
- 中毒症状(頭痛、嘔気、動悸、期外収縮など)で中止
アドレナリン
最も強力な治療です。重症では早期にアドレナリンの投与を考慮します。
ただ、心肺停止の時などに使われる薬なので、頻脈、血圧など厳重なモニターが必要。小発作でいきなり使うものではないです。
具体的な処方例が以下の通りです。
- アドレナリン(ボスミン™)0.3mg 筋注
妊婦には使いにくいので要注意です。
マグネシウムの点滴
他の治療法が効かない場合には考慮していいです。ただ、他の治療より効果は得づらい印象です。
- 硫酸マグネシウム2g(2バイアル) + 生食100ml 20分で投与
腎不全や心不全では点滴しない方がいいです。
ポイント6:問診で普段の状況も把握する
治療も行いながら、以下の情報も聞いておきましょう。
- 何歳から?
- アレルギーは?
- 普段の治療内容は?
- 副作用は?
- 1年以内の救急受診は?
- 最近1カ月の発作は?
- 今回の発作はいつから?
- きっかけ?風邪?寒冷?
入院した方がいい状況
治療をしたけど、いまいち良くならない。入院した方がいいのかな。
入院した方がいい状況として、以下のものがあります。
- 治療開始から数時間以内に症状の改善が認められない場合
- 入院を必要とするような重症発作の既往がある
- 数日から1週間と長期間症状が続いていた場合
- 肺炎、気胸などを合併している場合
- 帰宅後の医療機関受診が困難である場合
「喘息予防・管理ガイドライン2018」の内容を要約
患者の状況に応じて判断していきましょう。
まとめ
それでは、内容を振り返ります。
発作の強度はガイドラインの表もあったけど、シンプルに行くならこんな分類です。
- 横になれる→小発作
- 横になれない→中発作
- 意識障害、SpO2<90→大発作
救急外来で見たときなどはこのような点がポイントです
- ポイント1:状態を見る(発作強度の分類)
- ポイント2:身体所見や胸部レントゲンで他の疾患を除外
- ポイント3:SpO2をチェック。90%をキープする
- ポイント4:初期治療はまず短時間作用型β刺激薬(SABA)
- ポイント5:改善が見られなければ重症度に応じて追加治療を行う
- ポイント6:問診で普段の状況も把握する
治療薬はまずは短時間作用型β刺激薬(メプチン™)。効かない場合は以下のものも。
- ステロイドの全身投与
- テオフィリン
- アドレナリン
- マグネシウムの点滴
重症では早期にアドレナリンの投与を考慮します。
以上、参考になれば幸いです。普段、喘息の患者さんと関わることがある方は、明日から参考にしてみてください。
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
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