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肺炎の診断基準【症状、検査、入院の基準などを解説】※医療従事者むけ

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2021年6月19日 (更新日:2021年11月13日)
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この間レントゲンで肺炎かなと思ったけど、どうやって断定したらいいかわからなかった。

今回はそういった疑問にお答えします。

今回の内容はこちら

  • 肺炎を診断する方法
  • 症状
  • 身体所見
  • 検査
  • 鑑別疾患
  • 入院か外来か

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

自分が研修医のとき、肺炎の診断基準って何なんだろうと不思議に思っていました。調べても全然出てこないし。

この記事では、診断基準のみでなく、症状や検査や鑑別疾患などを網羅的に解説しています。

この記事を読むと、肺炎の診断がより正確にできるようにになります。

研修医の先生をはじめとして、看護師や薬剤師の方も見ていい内容なので、ぜひ参考にしてみだください!

  1. 肺炎を診断する方法【結論:明確な診断基準はありません】
  2. どんな症状で疑うか
  3. どんな所見があるか
  4. 検査結果:採血、レントゲン、CT
  5. 他の病気じゃないか:鑑別疾患は?
  6. どの菌が悪さをしているか:原因菌の推定
  7. 入院で治療を行うか、外来で治療を行うか
  8. まとめ

肺炎を診断する方法【結論:明確な診断基準はありません】

まずは結論です。

明確な診断基準はありません。

といっても、困りますよね。

実際は、症状や所見や検査結果などから総合的に判断します。

具体的には、これらの情報から判断します。

  • 症状:発熱、咳嗽、喀痰など
  • 所見:発熱、呼吸回数↑、ラ音
  • 検査結果:血液検査でWBC↑、CRP↑、胸部レントゲンやCTで浸潤影
  • 喀痰:グラム染色

図で示すとこうです。

肺炎 治療 診断 症状 血液検査 レントゲン CT 治療 抗菌薬 予防 入院 A-DROP

肺炎に明確な診断基準はない。症状や所見や検査結果などから総合的に判断。

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そんなことは分かっている。もう少し詳しく教えてほしい。

では、それぞれの項目を見ていきます。

どんな症状で疑うか

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代表的な症状は、発熱、咳嗽、喀痰などです。

後で出てきますが、定型肺炎は喀痰が多い湿性咳嗽で、非定型肺炎では喀痰が少ない乾性咳嗽という特徴があります。

どんな所見があるか

身体所見として特徴なものを下に挙げました。

  • バイタルサイン:発熱、呼吸回数↑、SpO2↓
  • 聴診:水泡音(Coarse Crackles)

詳しく見ると打診や音声振盪などありますけど、ひとまず難しいのでそこはいいです。

水泡音に関しては[水泡音と捻髪音はどんな音?原因疾患は?【呼吸音は4種類で十分】]で解説していますので、ぜひ参考にしてみだください。

検査結果:採血、レントゲン、CT

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検査結果はこちらが主なものです。

  • 血液検査:WBC↑、CRP↑
  • 胸部レントゲンや胸部CT:浸潤影

後で出てきますが、非定型肺炎ではWBCやCRPが上昇しづらかったり、CTでも浸潤影よりすりガラス陰影が主だったりします。

胸部レントゲン

主な所見はこれらです。

  • 白くべったり(浸潤影)
  • 影の形や部位は、その肺炎次第で変わってくる
  • Air Bronchogram(気管が透けて見える)

実際の画像もご覧いただきます。

肺炎 治療 診断 症状 血液検査 レントゲン CT 治療 抗菌薬 予防 入院 A-DROP

レントゲンは他の疾患との違いも含めて、[【保存版】胸部レントゲンの所見まとめ(無気肺、胸水、肺炎、心不全、間質性肺炎、気胸、COPD)]でも解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

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他の病気か迷うことはない?

他の病気じゃないか:鑑別疾患は?

ややこしい鑑別疾患がいくらかあります。

心不全

心不全の場合は、肺炎との違いとして以下のようなが特徴があります。

  • 症状:起坐呼吸
  • 所見:浮腫、頸静脈怒張
  • 血液検査:BNP↑
  • 胸部レントゲンやCT:白くべったり(浸潤影)、中心付近に多いButterfly shadow、胸水、心拡大

という特徴があります。表にまとめると、下のようになります。

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とは言うものの、心不全にもいろんなタイプがあったりするし、また肺炎と併発していたりするし、判断が難しい場面は多々あります。

間質性肺炎

間質性肺炎の場合は、肺炎との違いとして以下のような特徴があります。

  • 症状:喀痰がすくない感性咳嗽
  • 血液検査:KL-6↑
  • 胸部CT:すりガラス陰影、蜂巣肺など

概して、細菌性肺炎でいうなら後述する非定型に似てきます。

ただ、間質性肺炎にもいろんなタイプがあったり、肺炎と併発していることもあるし、判断に迷うことが多々あります。

最終的に気管支鏡を行うこともあります。

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原因になってる菌を見つけることはできるの?

はい、できます。次に解説していきます。

どの菌が悪さをしているか:原因菌の推定

良質な喀痰を採取する努力は最大限行う!

感染症の治療の原則ですが、原則は菌の種類を同定する努力をすることです。

肺炎の場合、まずは喀痰です。つばではない、喀痰を取るのが大事。

検査するに値する良質な痰なのかを判断する基準が2つあります。1つは痰を肉眼で見た時の基準で、もう1つは痰を顕微鏡で見たときの基準です。

Miller&Jones分類:痰を肉眼で見た時の基準

以下のような分類です。

M1唾液、完全な粘性痰
M2粘性痰の中に膿性痰が少量
P1膿性痰で膿性部分が1/3以下
P2膿性痰で膿性部分が1/3~2/3
P3膿性痰で膿性部分が2/3以上

肉眼的に良質な痰で、P1以上は欲しいところです。痰を含めて図で見るとこうなります。

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Geckler分類:痰を顕微鏡で見た時の基準

以下のような分類です。

上皮細胞
(1視野あたりの細胞数)
好中球
(1視野あたりの細胞数)
1>25<10
2>2510~25
3>25>25
410~25>25
5<10>25
6<25<25

Geckler分類では4か5が欲しいところです。顕微鏡での図がこちらです。

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同じ痰がどうしても出ない時は

以下の方法で工夫します。

  • 背中のタッピング
  • 3%高張食塩水によるネブライザーを吸入(10%食塩水1ml + 生理食塩水2ml)
  • 肺炎球菌/レジオネラの尿中抗原も併用

痰が出ない時は、このような方法があります。
これらも行って、初めて痰を取る努力をしたと言っていいでしょう。

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痰がとれたけど、実際どんな菌が多いの?

肺炎に多い原因菌は?

市中肺炎で多い菌が以下の通りです。

  • 定型肺炎
    •  肺炎球菌
    •  インフルエンザ桿菌
    •  モラクセラ
  • 非定型肺炎
    •  マイコプラズマ
    •  レジオネラ

一方、院内肺炎での特徴は、薬剤耐性菌が増えるということ。具体的には以下の通りです。

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
  • MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)
  • グラム陰性腸内細菌(Enterobacter属、大腸菌(Escherichia coli)、Serratia marcescens、Proteus属、Acinetobacter属)など

非定型肺炎の菌は、グラム染色では見えません。

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ところで、グラム染色ってどう見えるの?

グラム染色ではどう見える?

ここでは簡単に説明します。

簡単に言うと、赤く見えるか青く見えるか、もしくは丸くみえるか細長く見えるかです。

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  • 赤く見える:グラム陰性菌
  • 青く見える:グラム陽性菌
  • 細長く見える:桿菌
  • 丸く見える:球菌
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そして、代表的な菌はこうなります。

青い赤い
丸いグラム陽性球菌
→肺炎球菌
グラム陰性球菌
→モラクセラ
細長いグラム陰性球菌グラム陰性桿菌
→インフルエンザ桿菌
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自分が若手のころ、バイキンマンに見えたら肺炎球菌、ドキンちゃんにみえたらモラキセラと教えてもらいました。

グラム染色以外ではどんな調べ方がある?

代表的なものは、尿中抗原と抗体検査です。

尿中抗原

レジオネラと肺炎球菌の尿中抗原が測れます。キットになっていて、15分くらいで診断できます。

特異度がほぼ100%なので、陽性となったらその菌と考えてよいでしょう。

抗体検査

主にはマイコプラズマです。

詳細は省きますが、PA法とCF法と2つあります。
それぞれ、1時点のみの測定を行うシングル血清と、2~4週間あけて2回測定するペア血清の2種類あります。

  • PA 法:シングル血清 320 倍 or ペア血清で 4 倍以上の抗体価上昇
  • CF 法:シングル血清 64 倍 or ペア血清で 4 倍以上の抗体価上昇

LAMP法

いわゆるPCR、つまり遺伝子の核酸を検出する方法です。

検査自体は、痰もしくは咽頭ぬぐい液をとって提出するだけ。比較的短時間で出ます。

特異度がほぼ100%なので、陽性となったらその菌と考えてよいでしょう。

原則は菌の種類を同定する努力をすること。肺炎の場合、まずは喀痰。つばではない、喀痰を取るのが大事。

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菌も分かった。治療に移りたいけど、入院させた方がいい?

では、そこを解説します。

入院で治療を行うか、外来で治療を行うか

一言でいえば、「重症か中等症なら入院で、軽症なら外来」となります。

では、どうやって重症かどうか判断するのでしょう。

日本で有名なものがA-DROPと、CURB65という基準です。どちらでも大差ないので大丈夫です。ここでは両方紹介します。

A-DROP

AAge
年齢
男性70歳以上
女性75歳以上
DDehydration
脱水
BUN≧21mg/dL
脱水
RRespiration
呼吸
SpO2 ≦ 90%
PaO2 ≦ 60Torr
OOrientation
意識
意識障害
PPressure
血圧
血圧 ≦ 90mmHg
出典:日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2017

当てはまる項目数に応じてこのように判断します。

  • 軽症:0項目 → 外来
  • 中等症:1、2項目 → 外来または入院
  • 重症:3項目 → 入院
  • 超重症:4、5項目 → ICU考慮

CURB-65

CConfusion意識障害
UUreaBUN 20mg/dL 以上
RRespiratory Rate呼吸数 30回/分 以上
BBlood Pressure血圧 90/60mmHg 以下
6565歳以上

死亡率:(0~1点)2%、(2~3点)15%、(4~5点)50%

2点以上なら入院が望ましいと言われています。

重症度の判定:日本で有名なものがA-DROPと、CURB65。

まとめ

では、内容を振り返ります。

  • 肺炎に明確な診断基準はない。症状や所見や検査結果などから総合的に判断。
  • 症状:発熱、咳嗽、喀痰など
  • 所見:発熱、呼吸回数↑、ラ音
  • 検査結果:血液検査でWBC↑、CRP↑、胸部レントゲンやCTで浸潤影
  • 胸部レントゲン:白くべったり(浸潤影)、影の形や部位はその肺炎次第で変わってくる、Air Bronchogram(気管が透けて見える)
  • 重症度の判定:日本で有名なものがA-DROPと、CURB65。
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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

コキュトレではクイズも用意しています。

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