酸素療法の種類と使い分け【酸素と二酸化炭素を分けて考えましょう】 | コキュトレ
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酸素療法の種類と使い分け【酸素と二酸化炭素を分けて考えましょう】

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2020年12月31日 (更新日:2023年3月26日)
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カニュラとかNPPVとかベンチュリーマスクとか、どう使い分けていいか分からない。

こういった疑問に答えていきます。

この記事の内容

  • カニューレ、リザーバーマスク、ネーザルハイフロー、NPPVなどをどう使い分けるか

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

日本には10種類以上の酸素器具があります。多くて、どの場面でどれをつかうのか迷うって人もいますよね。

この記事を読むことで、どれを使うべきなのか判断できるようになります。

酸素を普段つかうような医師、看護師をはじめとした医療従事者の方はぜひ参考にしてみてください!

  1. 酸素と二酸化炭素を分けて考える【最重要】
  2. 酸素について
  3. 二酸化炭素について
  4. まとめ

Youtubeでも解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!

酸素と二酸化炭素を分けて考える【最重要】

デバイスの選択のとき、酸素と二酸化炭素を切り分けて考えるとわかりやすいです。

これが最も大事な点です。大事なので、図にもしてみました。

酸素療法

では、それぞれ見ていきます。

酸素に関して:酸素濃度で考える

まずは酸素の観点です。シンプルに、どれだけのFiO2を与えられるかで考えましょう。

酸素療法

酸素の状態がそこまで悪くないとき

これらが選択肢に上がります。

  • カニュラ:6L/分まで
  • マスク:4~7L/分程度
  • オキシマイザー:7L/分まで
  • オキシマスク:1~15L/分

患者さんのSpO2に応じてこれらを選ぶとよいです。

また、カニュラとオキシマイザーは鼻につけるので、口が自由になるというメリットがあります。

オキシマイザーは、カニュラに2L程度上乗せした効果があります。例えば、オキシマイザー2L/分は、カニュラ4L/分くらいと考えてよいでしょう。

オキシマスクは、それのみで1Lから15Lまでカバーできます。しかし、酸素の流量が大きくなると誤差も大きくなります。あと、他に比べて高額です。

もっと詳しく知りたい人はこちらもご覧ください。
>>酸素療法(カニュラ、オキシマイザーetc)の注意点は?どう使い分ける?

特にたくさん酸素を与えたい時

酸素療法

特にたくさん酸素を与えたいとき、リザーバーマスク、Nasal High Flow ® 、NPPV、人工呼吸器が選択肢にあがります。

酸素を与えられるもの:リザーバーマスク、Nasal High Flow ® 、NPPV、人工呼吸器

これらは、下の図のような違いがあります。

酸素療法

その患者さんに応じたものを選びましょう。

ネーザルハイフローとNPPVについて詳しく知りたい人はこちらもご覧ください。
>>ネーザルハイフロー(Nasal High Flow)とは?【最も大事な機能を解説】
>>ネーザルハイフロー(Nasal High Flow)の使い方を解説【設定や観察項目も】
>>NPPVとは?適応疾患は?何ができる?【10年目の呼吸器内科医が解説】

酸素の状態がそこまで悪くないときは、カニュラ、マスク、オキシマイザ、オキシマスクをSpO2に応じて装着。酸素の状態がかなり悪い時は、リザーバーマスク、Nasal High Flow ® 、NPPV、人工呼吸器が選択肢。

では、二酸化炭素に関する視点を見ていきます。

二酸化炭素に関して:ナルコーシスで考える

高CO2血症の人がたくさん酸素を吸うと、意識障害、呼吸低下などを引き起こります。これをCO2ナルコーシスと言います。

高CO2血症の人は、CO2ナルコーシスのリスクあるので慎重にデバイスを選びます。大きく、下の2つの状況にわけて考えましょう。

  • 自発呼吸が十分。
  • 自発呼吸が弱い。呼吸回数が少ない。

自発呼吸が十分

自発呼吸が十分にある場合は、酸素をたくさん吸わずに少量吸ってもらうようにします。

そうして、まず自然とCO2が吐けることを期待してみることが多いです。

具体的には、カニュラかベンチュリーマスクで始めることが多いです。

酸素療法

とくにベンチュリーマスクは、FiO2(吸入している酸素濃度)を一定に保つこともできます。

ベンチュリーマスクをさらに詳しく知りたい人はこちらもご覧ください。
>ベンチュリーマスクとインスピロンとは?何ができる?実際どう使う?

CO2が体にたまっているが自発呼吸が十分にある時は、カニュラ、ベンチュリーマスクが選択肢。

自発呼吸が弱い、呼吸回数が少ない

一方、自発呼吸が弱かったり呼吸回数が落ちている場合は、CO2を無理やり吐き出させなければなりません。

そして、それができるのはNPPV、人工呼吸器です。

酸素療法

これは、プレッシャーコントロール(PC)やプレッシャーサポートをかけることができるからです。詳しく知りたい人はこちらもご覧ください。
>>NPPVとは?適応疾患は?何ができる?【10年目の呼吸器内科医が解説】

CO2が体にたまっているて自発呼吸も弱い時は、NPPV、挿管が選択肢。

まとめ

では、内容を振り返ります。

  • 酸素と二酸化炭素を切り分けて考える
  • CO2が体にたまっていなければ、酸素の状態に応じてデバイスを選択。酸素の状態がそこまで悪くないときは、カニュラ、マスク、オキシマイザ、オキシマスクをSpO2に応じて装着。酸素の状態がかなり悪い時は、リザーバーマスク、Nasal High Flow ® 、NPPV、人工呼吸器が選択肢。
  • CO2が体にたまっているが自発呼吸が十分にある時は、カニュラ、ベンチュリーマスクが選択肢。
  • CO2が体にたまっているて自発呼吸も弱い時は、NPPV、挿管が選択肢。

図でもポイントをまとめました。

酸素療法

以上、参考になればうれしいです。明日からの仕事にぜひ活かしてみてください!

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。
>>酸素療法の器具の使い分け【クイズで学ぶ】

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ブログよりもっといいのはない?

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勉強会での準備が大変

勉強会の準備って、とにかく大変ですよね。準備自体が自分のためになるのは分かるけど、たいてい10時間以上かかったりするし。このブログ記事の元ネタのパワーポイントをnoteでダウンロードできます。

この記事は日本呼吸器学会 酸素療法マニュアルを参照して書きました。