人工呼吸器の患者さんにあたったけど、記号とか多いし数字だらけだし、難しくて全然わからない。重症だから分からなきゃいけないのに。
今回は、こんな疑問にお答えします。
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
この記事を書いている筆者は、呼吸器内科をして10年。さらに複数の病院の呼吸ケアチームも入ってて、これも10年です。
でも、最初に呼吸ケアチームに入ったのも、分からなさすぎてヤバイと思ったからなんですよね。
だって、本を読んでも難しいことばかり書いてあるし、実践にどう活かしていいかわからないし。
働くうちにそのあたりは分かるようになりました。
しかし、今から思い返すと、
人工呼吸器の本、難しすぎ!実践に必要なポイントを外しすぎ!
なんです。
いろいろ書いてくれてるんですけど、実践向けのものがあまりなかったと思います。
だから、10年の経験を生かして、初心者にも分かりやすいような記事を書きました。最後まで見れば、大事な部分は分かるようになります。
- 第1回:人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】※初心者向け
- 第2回:人工呼吸器の設定・完全解説【結論:酸素と二酸化炭素をわけて考えましょう】
- 第3回:人工呼吸器の合併症と、予防する方法【VAP、ストレス潰瘍、喉頭浮腫】
- 第4回:人工呼吸器のアラームを理解するコツ【原因は機械、チューブ、患者のどれか】
- 第5回:人工呼吸器のグラフィックでの異常波形【ファイティングの直し方も解説】
- 第6回:人工呼吸器の看護ケア【気管吸引、カフ圧計、チューブ固定、口腔ケア】
- 第7回:人工呼吸器の観察項目や使い方を解説【1人で看護できるようになる】
- 第8回:人工呼吸器のウィーニングをする方法【キーワードはSATとSBT】
第1回:人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】※初心者向け
人工呼吸器のモードが複雑で理解できない。
人工呼吸器のモードをどう使い分けていいか分からない。
こんな人に向いた記事です。
人工呼吸器のモードって、たくさんあるし、名前も英語が多くて分かりづらいですよね。
自分も習い始めたときは、それはもう混乱しました。
人工呼吸器のモードを理解するのに重要な考え方
でも実は、ある1つの考え方を知るだけで、スッと覚えやすくなります。
その考え方とは、
「呼吸するタイミングの決め方」と「呼吸する量の決め方」の組み合わせでモードが決まる
ということです。
「呼吸するタイミングの決め方」と「呼吸する量の決め方」
呼吸するタイミングの決め方は、A/C、CPAP、SIMVの3つ
- CPAP:吸気のタイミングを患者が決める。自発呼吸。
- A/C:吸気のタイミングを機械が決める。強制換気
- SIMV:自発/強制の両方。混合型
呼吸する量の決め方は、VC、PC、PRVCの3つ
- VC:従量式。一回換気量を設定。
- PC:従圧式。吸気圧を設定。
- PRVC:圧補正従量式。設定した一回換気量に応じて機械が圧を計算。
この組み合わせの、どこに入るかでモードが決まります。こんなイメージです。
例えば、呼吸のタイミングはA/Cで、換気量はPCといった感じです。
これを頭において、人工呼吸器の本を読んでください。だいぶ分かりやすくなると思います。
この考え方が分かれば、モードは9割は分かったようなもんです。
続きが気になる人は、[人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】※初心者向け]をご覧ください。
第2回:人工呼吸器の設定を初心者に解説【結論:酸素と二酸化炭素をわけて考えましょう】
人工呼吸器がなんで今の設定になっているか分からない
患者さんが悪くなったけど、どう設定をかえていいかわからない
こんな人に向けた記事です。
人工呼吸器のモニターって数字や英語がたくさん並んでて、最初はかなり難しいです。自分もこのあたりが理解できるのは何か月とかかりました。
ここでは、設定を理解するのに大事な考え方を2つ紹介します。
これが分かるだけで、いろんな数字がグッと分かりやすくなります。
その考え方とは、この2つ。
- 【大切な考え方①】酸素と二酸化炭素をわけて考える。
- 【大切な考え方②】人工呼吸は体に毒
【大切な考え方①】酸素と二酸化炭素をわけて考える。
まず、1つ目の考え方です。
酸素と二酸化炭素をわけて考えましょう。
もっと言うと、
SpO2に関わるのはFiO2とPEEP、PaCO2に関わるのはPS/PCとRR。
ということです。
二酸化炭素にかかわるもの
二酸化炭素を吐き出すためには、換気量を増やす必要があります。
では、換気量に関わる設定は何でしょう。
ここで、下の図をご覧ください。
ここで換気量の目安になるのが、MV(分時換気量)。
MV(分時換気量)を増やすためには、TV(一回換気量)を増やすか、RR(呼吸回数)を増やすか。
TV(一回換気量)を増やすには、PS(プレッシャーサポート)もしくはPC(プレッシャーコントロール)を増やすかです。
酸素にかかわるもの
一方、酸素に関わるものはこの2つ。
- FiO2(吸入酸素濃度)
- PEEP(呼気終末陽圧)
FiO2を上げるとSpO2が上がるのは分かりやすいと思います。
PEEPを増やすと、息を吐いた時にも肺が虚脱しにくくなります。そのため、酸素を多く取り込むことができます。
【大切な考え方その2】人工呼吸は体に毒
これもめちゃくちゃ大事です。
病気を治すのは例えば抗生剤などで、人工呼吸は薬が効くまで呼吸を保つためのもの。人工呼吸器が治療はしていません。
ここで、風船を膨らませてみるところを想像してみてください。
風船に力がかかるのはどこでしょう?
まず、膨らみはじめはかなり強く吹き込まなければなりません。また、割れる直前も風船に力がかかってそうです。
これは肺も同じです。
肺をしぼませすぎたり、ふくらませすぎると傷んでいきます。
中間くらいのところで軽く膨らんだりしぼんだりするのが、肺にやさしい換気です。
人工呼吸器の患者さんをみるときは、この感覚を持っていてください、
続きが気になる人は、[人工呼吸器の設定・完全解説【結論:酸素と二酸化炭素をわけて考えましょう】]をご覧ください。
第3回:人工呼吸器の合併症と、予防する方法【VAP、ストレス潰瘍、喉頭浮腫】
人工呼吸器の合併症は何がありますか?
合併症を起こさないような看護がしたい。
こういった人に向けた記事です。
ちょっと人工呼吸器の管理をやっていると、思い通りに治療がすすまないことがよくあります。
熱が出たり、せん妄を起こしたり、合併症にかなり悩まされます。
ここでは、人工呼吸器でよく起こる合併症と予防の方法を解説します。
人工呼吸器による合併症【一覧】
人工呼吸器による合併症は、主なものでこれらがあります。
- 挿管・気切チューブによるもの:人工呼吸器関連肺炎(VAP)、咽頭喉頭浮腫
- 人工呼吸器設定に関するもの:気胸、皮下気腫、人工呼吸器関連肺障害(VALI)、血圧低下
- 臥床によるもの:褥瘡、廃用性症候群
- 精神的ストレスによるもの:せん妄、不眠、ストレス潰瘍
合併症の予防策
そして、これらが予防策です。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防バンドル
- 手指衛生
- 人工呼吸器回路を頻回に交換しない
- 適切な鎮静・鎮痛。過鎮静を避ける。
- 人工呼吸器からの離脱ができるか毎日評価する
- 仰臥位はなるべく避ける
喉頭浮腫の予防
- カフ圧の調整:20~30cmH2Oを目標
- カフリークテスト
- プレドニン
ストレス潰瘍の予防
- 経腸栄養を行うことでリスクは下げられる
- 予防薬の合併症で肺炎が増える
- 使用薬は、オメプラゾールなどのPPIが第一選択。代替薬としてレバミピドなどのヒスタミンブロッカーも選択肢。
続きが気になる人は、[人工呼吸器の合併症と、予防する方法【VAP、ストレス潰瘍、喉頭浮腫】]をご覧ください。
第4回:人工呼吸器のアラームを理解するコツ【原因は機械、チューブ、患者のどれか】
人工呼吸器でアラームがなったけど、何が起きているか分からなくて頭が真っ白になる。
こういった人に向けた記事です。
人工呼吸器でも、何が起こっているかをアラームから判断するのは、かなり難易度の高いことです。
自分も1年目、2年目の時は全く分かりませんでした。
人工呼吸器のアラームを理解するコツ
ここでは、アラームを理解するのに大事な考え方をまず説明します。
これが分かるだけで、患者さんの体に何が起きているかがグッと分かりやすくなります。
「問題がある場所は、機械、チューブ、患者のどこかにある」
あたり前のようですが、こう考えると分かりやすくなります。
大事なので図にもしました。
「風船をふくらます人」に例えてみた
ここで、いったん例えてみます。
「ストローを通じて風船をふくらませる人」を想像してみてください。
人工呼吸器でいうなら
- ふくらませる人→人工呼吸器
- ストロー→チューブ
- 風船→肺
となります。
もし上手いこと膨らまない場合、その原因は、風船、ストロー、人のどこかに絶対あります。
風船に起こりうるトラブル
上手いこと膨らまなくて、風船に起こりうるトラブルはどんなものがあるでしょう。
例えば、風船がゴム手袋のように固い場合。これは人工呼吸器でいえば、間質性肺炎やARDSのように肺コンプライアンスが低下して固くなった状態にあたります。
あとは、口をしばりすぎて固い場合。これは人工呼吸器でいえば、気管支喘息やCOPDのように気道抵抗が上がって、気道が細くなった状態にあたります。
続きが気になる人は、[人工呼吸器のアラームを理解するコツ【原因は機械、チューブ、患者のどれか】]をご覧ください。
第5回:人工呼吸器のグラフィックでの異常波形【10年目の呼吸器内科が解説】
人工呼吸器のモニターを見ても何にも分からない
先生が波形を見て設定を変えたけど、どうしてそうなったのか分からない
こういった人に向けた記事です。
人工呼吸器でも、モニターに映っている波形から診断するのは、かなり難易度の高いことです。
本を読んでも、この内容を網羅的に書いているのは多くありません。
そこで、ここでは完全版としてまとめました。
人工呼吸器モニターの正常波形
異常波形を理解する前に、まずは正常波形を理解しなければなりません。
ここで、人工呼吸器のモニターを見てください。そうすると、3つのグラフが並んでいます。
上から順番に、圧波形、フロー波形、換気量波形。
それぞれ、このような意味です。
- 圧曲線:圧を示したグラフ
- フロー波形:空気の流れを示したグラフ
- 換気量波形:換気量を示したグラフ
これが、VC(従量式)、PC(従圧式)で分かれてきます。
・・とまだ続くのですが長くなるので、続きが気になる人は、[人工呼吸器のグラフィックでの異常波形【10年目の呼吸器内科が解説】]をご覧ください。
第6回:人工呼吸器の看護ケア【気管吸引、カフ圧計、チューブ固定、口腔ケア】
気管吸引とかを自己流でやってきたけど、正しい方法が知りたい
カフ圧計を急に渡されたけど、やり方が分からなかった
チューブの固定方法はどうしたらいい?
こういった人に向けた記事です。
1年目の方は、先輩に言われるままやっていることが多いと思います。
けど、なんでこの方法なのかとか、ミスが多いポイントもわかっておきたいはず。
この記事では、以下の内容を紹介します。看護師のみでなく、医師や臨床工学士も知っていていい内容です。
- 気管吸引の行い方
- カフ圧計の使い方
- チューブの固定方法
- 口腔ケアのやり方
人工呼吸器の看護ケア【大前提】
ですが、その前に実は大前提があります。ここが非常に大事です。
それは、挿管チューブが抜けないように常に注意することです。
いいですか、「常に」です。
抜けるときは一瞬です。
そうすると、医師をよんで再挿管の準備をして・・・となってしまうので。
患者を動かす、テープを張り替えるなど、ちょっとでも動きのある時には、誰かがチューブを保持しておくようにします。
挿管チューブの保持のしかた
ポイントは、「小指側を患者の皮膚につけておくこと」です。
こうすれば、チューブがずれるリスクを最小限にできます。
チューブは1cmでもずれないようにしなければいけません。なのでこういった工夫が必要になります。
チューブを保持することをおさえた上で、記事では気管吸引などを具体的に紹介していきます。
続きが気になる人は、[人工呼吸器の看護ケア【気管吸引、カフ圧計、チューブ固定、口腔ケア】]をご覧ください。
第7回:人工呼吸器の観察項目や使い方を解説【1人で看護できるようになる】
人工呼吸器の準備のしかたが分からない
特にトラブルが起こりやすいところを知りたい
看護ではどこを観察すればいい?
こういった人に向けた記事です。看護師のみでなく、医師や臨床工学士も知っていていい内容です。
まず、人工呼吸器の観察項目を列挙します。
- 本体:バクテリアフィルター、コンセントの接続、回路の接続
- 回路:人工鼻、EtCO2、回路内のねじれ、ゆるみなど
- 挿管チューブ:カフ圧、固定位置、深さ
- 加温加湿器:水量、電源など
- 設定:モード、PC/PS、PEEP、呼吸回数、FiO2
- アラーム:気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
- 患者の数値:モード、PIP、PEEP、呼吸回数、FiO2、TV、MV
- 患者の状態:Vital Signs、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感
それぞれの詳細は[人工呼吸器の観察項目や使い方を解説【1人で看護できるようになる】]で紹介しています。
第8回:人工呼吸器のウィーニングをする方法【キーワードはSATとSBT】
できるだけ早く抜管したいけどどうしたらいい?
せっかく抜管したのに再挿管になってしまった。
抜管までの正しい方法を知っていれば、人工呼吸器から早く安全に離脱することができます。
逆に、気管切開の判断も早くできるようになります。
ウィーニングとは、人工呼吸器をつけている患者さんが離脱できるよう、設定を弱めたりしていく過程です。
人工呼吸器のウィーニングをするコツ
そして、人工呼吸器を早く離脱できる方法は、SATとSBTです。
- SAT(Spontaneous Awakening Trial):自発覚醒トライアルの略です。鎮静薬を減量するか中止して、患者が覚醒するかをテストします。
- SBT(Spontaneous Breathing Trial):自発呼吸トライアルでの略です。鎮静薬を減量するか中止して、自発呼吸がみられるかをテストします。
図にするとこうなります。
それぞれの詳細は[人工呼吸器のウィーニングをする方法【キーワードはSATとSBT】]で紹介しています。
まとめ
というわけで、以上で記事紹介です。
最後に、もう一度まとめます。
- 第1回:人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】※初心者向け
- 第2回:人工呼吸器の設定・完全解説【結論:酸素と二酸化炭素をわけて考えましょう】
- 第3回:人工呼吸器の合併症と、予防する方法【VAP、ストレス潰瘍、喉頭浮腫】
- 第4回:人工呼吸器のアラームを理解するコツ【原因は機械、チューブ、患者のどれか】
- 第5回:人工呼吸器のグラフィックでの異常波形【ファイティングの直し方も解説】
- 第6回:人工呼吸器の看護ケア【気管吸引、カフ圧計、チューブ固定、口腔ケア】
- 第7回:人工呼吸器の観察項目や使い方を解説【1人で看護できるようになる】
- 第8回:人工呼吸器のウィーニングをする方法【キーワードはSATとSBT】
人工呼吸器の本は難しいものが多いので、こちらで核となる部分をサクっと把握しちゃいましょう。ぜひ、参考にしてみてください!
もっと気軽に見たい
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もっと得意になりたい
さらに得意になりたい人は書籍や、キャリアを積める職場が大事です。
- オススメの書籍は[人工呼吸器を学ぶのにオススメの本、6選【2021年版】]にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
- より呼吸器が学べる職場を見つけたい人は、【保存版】医師転職・完全ガイド【転職したことない人向け】にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。