人工呼吸器の看護ではどこを観察すればいい?
人工呼吸器の準備のしかたが分からない
特にトラブルが起こりやすいところを知りたい
設定はどうしたらいいですか?
こういった疑問に答えていきます。
この記事の内容
- 人工呼吸器で必要な観察項目の一覧
- それぞれの項目での注意点
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
人工呼吸器って複雑だし、最初は担当にあたるとハードルが高いですよね。画面は訳がわからないし、なんだかたくさん器具がついてるし。
ここでは、人工呼吸器の看護で必要な観察項目を全て解説しました。
この記事を読むことで、1人で人工呼吸器の準備や看護ができるようになります!
- 結論:人工呼吸器の観察項目を列挙しました
- 本体:コンセントの接続、回路の接続
- 回路:人工鼻、EtCO2、回路内のねじれ、ゆるみなど
- 挿管チューブ:カフ圧、固定位置、深さ
- 加温加湿器:水量、電源など
- 設定:モード、PC/PS、PEEP、呼吸回数、FiO2
- アラーム:気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
- 患者の数値:モード、PIP、PEEP、呼吸回数、FiO2、TV、MV
- 患者の状態:Vital Signs、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感
- まとめ
Youtubeでガチ解説もしています。詳しくなりたい方はこちらもご覧ください!
結論:人工呼吸器の観察項目を列挙しました
施設によってルーチンで観察記録する項目もあるはずなので、そちらを優先させてください。ここでは一般的なものを紹介します。
- 本体:バクテリアフィルター、コンセントの接続、回路の接続
- 回路:人工鼻、EtCO2、回路内のねじれ、ゆるみなど
- 挿管チューブ:カフ圧、固定位置、深さ
- 加温加湿器:水量、電源など
- 設定:モード、PC/PS、PEEP、呼吸回数、FiO2
- アラーム:気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
- 患者の数値:モード、PIP、PEEP、呼吸回数、FiO2、TV、MV
- 患者の状態:Vital Signs、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感
看護項目は分かったけど、それぞれを詳しく説明してほしい
それでは、ひとつずつ見ていきます。
本体:コンセントの接続、回路の接続
コンセントは、機種によっては本体と加湿器の2つあります。よく、片方のみになっているというインシデントもあるので要注意。
回路の接続が外れていないかも注意。
回路:人工鼻、EtCO2、回路内のねじれ、ゆるみなど
回路のねじれやゆるみがないか、確認します。
人工鼻
人工鼻は、回路の間に挟まっているこちら。
目的は、加湿することです。加湿器か人工鼻か、加湿するしくみがないと患者さんの気道はかなり乾燥してしまいます。
患者さんからの呼気に含まれる水蒸気をフィルターでキャッチして、吸気でそれを吸うというしくみです。
なお、後で説明する加湿器があれば人工鼻は必要ありません。
EtCO2
患者の状況を知るのに重要な情報が、EtCO2。
簡単に言えば、「吐いた息に含まれる二酸化炭素の濃度」です。
得られる情報がいくつかあるのですが、特に大事なのが「息ができていない緊急事態を即時に感知できること」です。
これがSpO2なら、SpO2が低下するのに何分かかかります。
さらに、SpO2が低下したことには患者の状況が悪化した時です。すぐ感知できるメリットはかなり大きい。
EtCO2は以前Instagramでまとめました。詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
>>EtCO2をまとめたInstagram投稿
挿管チューブ:カフ圧、固定位置、深さ
挿管チューブで観察するのは、カフ圧、固定位置、深さなどです。
チューブの深さが変わっていないか、勤務ごとには確認しましょう。
深すぎると片肺挿管になってしまうかもしれないし、浅すぎると抜けてしまうかもしれません。
口腔内の環境を清潔に保つため、チューブの固定位置も定期的に変えましょう。口の右側、左側などです。
カフ圧の調整
これは、カフが周囲の気管を圧迫する圧です。
常に20~30cmH2Oを目標にします。これは、気管支動脈が30cmH2Oだからです。
それ以上になると血流が途絶えて、壊死や浮腫を起こしやすくなります。逆に浅いとリークが出やすくなります。
カフ圧計の使い方は[人工呼吸器の看護ケア【気管吸引、カフ圧計、チューブ固定、口腔ケア】]で解説しています。
加温加湿器:水量、電源など
加温加湿器は、機種によってあるもの、ないものがあります。
以下の内容に特に注意してください。
- 電源をいれる
- 温度は体温くらい
- 水がなくなっていないか定期的に確認
設定
ここ!ここが特に難しい!
そうですよね。人工呼吸器で理解するのが一番難しい部分です。
まずは、代表的な項目を列挙します。
- モード:A/CやSIMVやCPAPなど
- FiO2(Fraction of Inspiratory Oxygen):吸入中酸素濃度
- PEEP(Positive Endo-Expiratory Pressure):呼気終末陽圧。呼気にかかる圧。
- PS(Pressure Support):プレッシャーサポート。自発呼吸の吸気でかかる圧。
- PC(Pressure Control):プレッシャーコントロール。強制換気の吸気でかかる圧。
- RR(Respiration Rate):呼吸回数
- 吸気時間
- TV(Tidal Volume):一回換気量
- トリガー感度:患者さんの自発呼吸を人工呼吸器が拾い上げる感度
専門用語ばっかりで訳わからなくなりますね。
ここは奥が深い分野です。
モードは[【初心者向け】人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】]で解説しています。そのほかの設定値は[人工呼吸器の設定を初心者に解説【2つの重要な考え方】]で解説していますので、よければ参考にしてください。
アラーム
代表的なアラームを列挙します。
- 気道内圧上限アラーム
- 気道内圧下限アラーム
- 分時換気量上限アラーム
- 分時換気量下限アラーム
- 呼吸回数上限アラーム
- 呼吸回数下限アラーム
- 無呼吸アラーム
- 電源アラーム
- ガス供給アラーム
- 酸素濃度アラーム
これまた、難しい言葉が並んでいますね。
アラームはトラブルを防ぐために大事なところです。こちらも解説すると量が多くなるので、[人工呼吸器のアラームを理解するコツ【グッと分かりやすくなる】]を参考にしてみてください。
患者の数値:PIP、PEEP、呼吸回数、FiO2、TV、MV
さきほど出てきた項目の、今度は実測値です。
患者の状態:Vital Signs、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感
これは呼吸困難の看護計画に大きくかかわります。詳しくは[プチナースwebよく出合う症状の標準看護計画①呼吸困難]をご覧ください。
まとめ
それでは、内容を振り返ります。
- 本体:コンセントの接続、回路の接続
- 回路:人工鼻、EtCO2、回路内のねじれ、ゆるみなど
- 挿管チューブ:カフ圧、固定位置、深さ
- 加温加湿器:水量、電源など
- 設定:モード、PC/PS、PEEP、呼吸回数、FiO2
- アラーム:気道内圧上限/下限アラーム、一回/分時換気量アラーム、無呼吸アラーム
- 患者の数値:モード、PIP、PEEP、呼吸回数、FiO2、TV、MV
- 患者の状態:Vital Signs、呼吸音、胸郭の動き、喀痰、胃部膨満感
このあたりが分かれば、人工呼吸器の看護で必要な観察項目は一通り抑えることができます。ぜひ、明日からの仕事に活かしてみて下さい!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
>>人工呼吸器の看護ケア【クイズで学ぶ】
ブログよりもっといいのはない?
- Instagramでも同じ内容を発信しています。こちらからご覧ください。
- 人工呼吸器を書籍で学びたい人は[人工呼吸器を学ぶのにオススメの本、6選【2021年版】]もご覧ください。
- より呼吸器が学べる職場を見つけたい人は、[看護師転職サイトのランキング【結論:大手3サイト+自分の事情に合わせて】]にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
勉強会での準備が大変
勉強会の準備って、とにかく大変ですよね。準備自体が自分のためになるのは分かるけど、たいてい10時間以上かかったりするし。元ネタのパワーポイントをnoteでダウンロードできます。
上、参考になればうれしいです。明日からの仕事にぜひ活かしてみてください!