呼吸音なのか皮膚のすれた音なのか分かりにくいです。
呼吸音の種類がやたらと多くて混乱します。
呼吸音って最初はこう感じる人、多いと思います。私も習いたての頃はそうでした。
そういった人に向けて、呼吸音を聞けるようになるために、キレイに聞くコツを解説します。
そして、たくさんある呼吸音も重要な4つに絞りました。
それ以外は、難易度も上がれば重要度もさがります。正常な呼吸音とかも、正直そこまで要りません。
この4つが聞ければ、実務では十分対応可能です。
- 呼吸音を聴診する部位・コツ
- 抑えるべき4つの異常な呼吸音:水泡音、捻髪音、ウィーズ、ストライダー
- レベルアップできる、4つの呼吸音【ロンカイ、スクォーク、胸膜摩擦音、Hamman’s Sigs】
- 呼吸音の一般的な分類
- 吸気のタイミングによって分ける分類【レベルアップしたい人へ】
- まとめ
聴診歴10年の筆者が解説していきます!
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
呼吸音を聴診する部位・コツ
関連記事:呼吸音で背中も聴診する理由【聴診で聞きやすくなるコツも紹介】
できるだけ皮膚との擦れる音を少なくするために
呼吸音なのか皮膚のすれた音なのか分かりにくいです。
本を見てもなかなか書いていない内容ですが、経験上これらをすると雑音は入りにくくなります。
- 服を脱がす:服とこすれると音が入りやすくなります。
- ぴったり押し当てる:皮膚と聴診器がこすれる音をなくします。肋骨の凹凸も要注意です。
- 聴診器のピースの端を持つ:聴診器の中の音の通り道から離れたところを持ちましょう。
呼吸音を漏らすことなく聴取するために
吸気の終わりにしか聞こえなかったり、音の種類によっては最後まで、隅々まで聞かないと拾えないものもあります。
これらを行うとほぼ聞けるようになります。
- 前だけでなく背中も聴く:特に間質性肺炎や誤嚥性肺炎は背中でよく聴診されます。
- 聴診の部位は、左右対称に最低6か所
- 吸気・呼気全部聴く:捻髪音は吸気の最後の方でよく聞こえます。
もっと詳しく見たい方は[呼吸音で背中も聴診する理由【聴診で聞きやすくなるコツも紹介】]ご覧ください。
押さえるべき4つの異常な呼吸音:水泡音、捻髪音、ウィーズ、ストライダー
関連記事:水泡音と捻髪音の原因疾患は?どんな音?【呼吸音は4種類で十分】
呼吸音の種類がやたらと多くて混乱します。
呼吸音は種類が多いし名前もわかりにくく、勉強したての頃は難しいと思います。
漠然と聞いてても分かりにくいので、ちゃんと聞けるようにまずは音の聞き方から解説します。
3つの要素を意識して聴く
聴こえた音をどう表現していいかわからないときは、この3つの軸に分解して聴くと分かりやすく正確に把握できます。
- 音の高さ:低音、高音
- 音が途切れるか:途切れない(連続性)、ぶつぶつ(断続性)
- いつ聞こえるか:吸気、呼気
図に書くとこうなります。
では、実際の異常音を見ていきます。
異常音① 水泡音とは
直観的にはストローでぶくぶくしているイメージです。このイメージで大体は説明できます。
- 音の高さ:低音
- 音が途切れるか:ぶつぶつ(断続性)
- いつ聞こえるか:吸気中心。呼気も。
「ぶく」「ぶく」と音は途切れて聞こえるので断続性。
音が聞こえるのは、水に空気が入る時。つまり、病変部に息がはいる、吸気時です。
原因疾患、別名は以下の通り。
- 原因疾患:ストローで水をぶくぶく = 肺が水にたまる病気 = 肺炎
- 別名:Coarse Crackles
図にもまとめます。
実際に聞いてみましょう。
もっと詳しく見たい方は[水泡音と捻髪音の原因疾患は?どんな音?【呼吸音は4種類で十分】]も参考にしてみてください。
異常音② 捻髪音とは
直観的には紙風船をふくらましているイメージです。このイメージで大体は説明できます。
- 音の高さ:高音
- 音が途切れるか:ぶつぶつ(断続性)
- いつ聞こえるか:呼気
「ばり」「ばり」と音は途切れて聞こえるので断続性。
音が聞こえるのは、紙風船を膨らませる入る時。つまり、病変部に息がはいる、吸気時です。
原因疾患、別名は以下の通り。
- 原因疾患:紙風船 = 肺が固くなる病気 = 間質性肺炎(肺繊維症)
- 別名:Fine Crackles
図にもまとめます。
実際に聞いてみましょう。
もっと詳しく見たい方は[水泡音と捻髪音の原因疾患は?どんな音?【呼吸音は4種類で十分】]も参考にしてみてください。
異常音③ Wheeze (ウィーズ)とは
直観的には、笛を吹いているイメージです。このイメージで大体は説明できます。
- 音の高さ:高音
- 音が途切れるか:途切れない(連続性)
- いつ聞こえるか:呼気
「ぴーーーーー」と音は途切れないで聞こえるので連続性。
音が聞こえるのは、笛を吹く時。つまり、呼気時です。
原因疾患は以下の通り。
- 原因疾患:笛をならす = 気道が細い病気 = 気管支喘息、心不全(肺水腫)
図にもまとめます。
実際に聞いてみましょう。
もっと詳しく見たい方は[ウィーズとストライダーはどんな音?原因疾患は?【呼吸音は4種類で十分】]も参考にしてみてください。
異常音④ Stridor (ストライダー)とは
直観的には、喉をしめられたイメージです。このイメージで大体は説明できます。
- 音の高さ:高音
- 音が途切れるか:途切れない(連続性)
- いつ聞こえるか:吸気、呼気両方
原因疾患は以下の通り。
- 原因疾患:窒息
図にもまとめます。
実際に聞いてみましょう。
もっと詳しく見たい方は[ウィーズとストライダーはどんな音?原因疾患は?【呼吸音は4種類で十分】]も参考にしてみてください。
異常音(番外編) 呼吸音減弱
肺の音が外に伝わらない状態です。肺と皮膚の間、つまり胸腔での病変が考えられます。
- 原因疾患:気胸、胸水
水泡音、捻髪音、ウィーズ、ストライダーが分かっていればいいんですね。
はい、病院で働く上では、専門医以外は正直ここまでできていれば十分だと思います。
ここから先は、さらにレベルアップしたい人向けです。
レベルアップできる、4つの呼吸音【ロンカイ、スクォーク、胸膜摩擦音、Hamman’s Sigs】
関連記事:ロンカイはどんな音?スクォーク、胸膜摩擦音は?原因疾患は?【聴診がワンランク上になれる】
他の呼吸音も見ていきます。
ただ、重要性は低くなり、なおかつ難易度も高いです。
全部マスターしようとして混乱するくらいなら、先の4つを先にマスターしてください。
Rhonchi(ロンカイ)
- Wheezeと一連だと考えてよい。
- 原因疾患:喘息、心不全、細い気管に痰が貯留
実際に聞いてみましょう。
Squawk(スクォーク)
- 吸気の最後の方で短く「きゅー」ときしむ音。部分的に虚脱した気道が再開通した時に聞かれる。
- 原因疾患:間質性肺炎などで多い
実際に聞いてみましょう。
胸膜摩擦音
- 肺の外側(臓側胸膜)と、肋骨の内側(壁側胸膜)がこすれたときになる音。
- 吸気呼気両方
- 原因疾患:胸膜炎、癌の胸膜播種
実際に聞いてみましょう。音が小さめなので音量を上げてみてください。
Hamman’s Sign(ハマン)
- 心収縮中期のクリック音。心臓に空気が接すると、心拍動により音が生じる。
- 原因疾患:縦隔気腫、左気胸
詳しくはロンカイはどんな音?スクォーク、胸膜摩擦音は?原因疾患は?【聴診がワンランク上になれる】もご覧ください。
だんだん難しくなってきた。頭がこんがらがる。
やっぱり後半の4つは難しいですね。大丈夫、初心者のうちは最初の4つで十分です。
さて、実践を重視しているので、重要なものっていう分け方で見てきました。ここで、いったん用語の整理をします。
呼吸音の一般的な分類
今までの呼吸音は、正式にはこの図のように分類されます。
あと、これらの用語を確認しておきます。
- 副雑音:異常音の総称
- ラ音:肺胞由来の副雑音
最近は、これらとは別の分類のしかたも出てきています。これから、それを見て聞きます。
吸気のタイミングによって分ける分類【レベルアップしたい人へ】
関連:ロンカイはどんな音?スクォーク、胸膜摩擦音は?原因疾患は?【聴診がワンランク上になれる】
最近は、Cracklesを吸気のうちいつ聞こえるかという、別の分類の仕方もあります。タイミングのみに注目すればいいのでわかりやすいです。
4つあるのですが、大事なのはPanとLateの区別です。なぜなら、実はPanは水泡音、Lateは捻髪音とほぼ同じと言えるからです。
水泡音と捻髪音の違いを思い出してみてください(忘れた方はこちらもご覧ください)。
- 水泡音:吸気の間ずっと。肺炎。
- 捻髪音:吸気の後半に聞こえる。間質性肺炎。
上の図と比べると、ちょうどPanと水泡音が同じになっているのがわかりますでしょうか?
水泡音と捻髪音に迷ったとき、吸気の間ずっと聞こえるのか、吸気の後半に強くなるのかで区別をつけることができます。
Pan Inspiratory Crackles
- 吸気全体
- 原因疾患:肺炎・心不全
- 水泡音(Coarse Crackles)と実質同じもの。
Late Inspiratory Crackles
- 吸気の後半にかけて
- 原因疾患:間質性肺炎(肺繊維症)
- 捻髪音(Fine Crackles)と実質同じもの。
Early Inspiratory Crackles
- 吸気初期
- 原因疾患:慢性気管支炎
Early to mid Inspiratory Crackles
- 吸気初期から中期
- 原因疾患:気管支拡張症
まとめ
いかがでしたでしょうか。病棟で働く上での理解に役立てば幸いです。
呼吸音に関しての記事をこちらにまとめています。気になった方はこちらもご覧ください。
- 呼吸音で背中も聴診する理由【聴診で聞きやすくなるコツも紹介】
- 水泡音と捻髪音の原因疾患は?どんな音?【呼吸音は4種類で十分】
- ウィーズとストライダーはどんな音?原因疾患は?【呼吸音は4種類で十分】
- ロンカイはどんな音?スクォーク、胸膜摩擦音は?原因疾患は?【聴診がワンランク上になれる】
コキュトレはクイズも用意しています。気になった方はこちらもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
- 呼吸音の聴診で、余計な雑音と聞き漏らしをなくするコツ【クイズで学ぶ】
- 水泡音と捻髪音はどんな音?原因疾患は?【クイズで学ぶ】
- ウィーズとストライダーはどんな音?原因疾患は?【クイズで学ぶ】
- ロンカイ、胸膜摩擦音、Cracklesを解説【クイズで学ぶ】
もっと気軽に見たい!
気軽に見たい人に向けて、Instagramでも同じ内容を発信しています。
- Instagramでの投稿はこちらから。
もっと得意になりたい!
もっと得意になりたい人は、書籍がオススメです。また、それにぴったりの職場で働くのももっと大事です。
- オススメの書籍は呼吸音を学ぶのにオススメの本、4選【2021年版】にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
- より呼吸器が学べる職場を見つけたい人は、【保存版】医師転職・完全ガイド【転職したことない人向け】にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。