レントゲンの異常所見の前に、正常が分からない
いろいろありすぎて、結局何が見えるのかわからない
こういった疑問に答えていきます。
この記事では胸部レントゲンの正常所見について解説しています。
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
レントゲンって慣れないころは、肺を見ても薄い線だらけで、何が正常で何が異常かすら分かりませんよね。だからまず正常をしっかり分かる必要があります。
ここでは正常なものをしっかり理解できるよう、重要な14個に絞りました。研修医、看護師、コメディカルならこれで十分です。
これが分かれば、レントゲンの正常所見が働くのに必要なレベルで見分けられるようになります。
普段仕事でレントゲンを見ることがある人はぜひ参考にしてみてください!
- 骨のグループ:①鎖骨、②肩甲骨、③胸椎、④肋骨
- 心臓のグループ:⑤右心房、⑥左心室
- 血管のグループ:⑦肺動脈、⑧大動脈、⑨上大静脈
- 気管のグループ:⑩気管支、⑪右主気管支、⑫左主気管支
- その他のグループ:⑬横隔膜、⑭胃泡
- まとめ
レントゲンはいろいろあってややこしいので、ここでは5つのカテゴリーに分類しました。それぞれ見ていきたいと思います。
Youtubeでも解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!
骨のグループ:①鎖骨、②肩甲骨、③胸椎、④肋骨
①鎖骨
肋骨としっかり区別してください。図で示している、「ハ」の字を上下さかさまにしたように見えている骨です。
②肩甲骨
肩のあたりで見えています。
レントゲンが立位で撮影されているのか、ポータブルで撮影されているのか判断するのに役立ちます。
詳しく知りたい人は[胸部レントゲンの正しい見方【結論:撮影条件と読む順番が大事】]もご覧ください。
③胸椎
いわゆる「背骨」です。
心臓の裏に見えています。もし真っ白で見えなかったらレントゲン全体が濃く映りすぎと考えます。
時々骨折がわかることがあります。
④肋骨
肺に重なるようにたくさん見えている骨です。肋骨の裏に隠れた小さな肺癌が見逃されやすいということもあります。
詳しく知りたい人は[肺癌のレントゲン、見逃しやすいパターン5選【研修医必見】]もご覧ください。
心臓のグループ:⑤右心房、⑥左心室
⑤右心房
いわゆる、「右第2弓」です。
右心負荷の時に拡大して見えることがあります。
⑥左心室
いわゆる「左第4弓」です。
心不全の時によく拡大して見えます。
心肥大の基準として、CTR(心胸郭比)があります。式は下の図の通りです。
CTR(心胸郭比)>1/2の時、つまり心臓が胸郭の半分以上の時に心肥大とみなします。
詳しく知りたい人は[胸部レントゲンの異常所見まとめ【保存版】※重要な疾患7つを解説]もご覧ください。
血管のグループ:⑦肺動脈、⑧大動脈、⑨上大静脈
⑦肺動脈
図でいうと青の部分です。肺門部から肺の方向に向かっている陰影です。COPDや間質性肺炎などで右心負荷がかかるとここが拡大して見えます。
小さな肺癌がこの裏に隠れていることもあるので要注意です。
詳しく知りたい人は[肺癌のレントゲン、見逃しやすいパターン5選【研修医必見】]もご覧ください。
⑧大動脈
いわゆる「左第1弓」です。
左第1弓の辺縁を下に追っていくと、心臓の後ろを上下にはしる線につながります。図でいうと水色の線で、ここも大動脈の輪郭です。
もしこの水色の線が見えなかったら、ここに普通では存在しないような病変が隠れている可能性があります。
これを、シルエットサインといいます。
⑨上大静脈
気管のグループ:⑩気管支、⑪右主気管支、⑫左主気管支
⑩気管支
左右に分かれる前のものです。時々気管の中に腫瘤が見えることもあります。挿管の後にチューブの深さが問題ないかよく確認します。
⑪右主気管支
図に書いてある通りです。
⑫左主気管支
図に書いてある通りです。
その他のグループ:⑬横隔膜、⑭胃泡
⑬横隔膜
本来は右の方が3~5cmほど高く見えます。胸水がたまっていると、端っこの方にCP Angleという形で胸水が見えることがあります。
また、胸水がもっと多くなると、通常より横隔膜が高く挙がって見えます。
詳しくは[胸部レントゲンの異常所見まとめ【保存版】※重要な疾患7つを解説]もご覧ください。
⑭胃泡
患者さんにこの影は何かと聞かれることも多いはず。
胃泡は、レントゲンが立位で撮影されているのか、ポータブルで撮影されているのか判断するのに役立ちます。
詳しく知りたい人は[胸部レントゲンの正しい見方【結論:撮影条件と読む順番が大事】]もご覧ください。
まとめ
それでは、今まで見てきたものをまとめます。
- 骨のグループ:①鎖骨、②肩甲骨、③胸椎、④肋骨
- 心臓のグループ:⑤右心房、⑥左心室
- 血管のグループ:⑦肺動脈、⑧大動脈、⑨上大静脈
- 気管のグループ:⑩気管支、⑪右主気管支、⑫左主気管支
- その他のグループ:⑬横隔膜、⑭胃泡
このあたりが分かれば、研修医、看護師、コメディカルなら十分です。まだ慣れなくても、この知識を頭において繰り返しレントゲンをみれば、徐々にわかってきます。
以上、参考になればうれしいです。明日からの仕事にぜひ活かしてみてください!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
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>>正常な胸部レントゲンで見えるもの【クイズで学ぶ】
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- レントゲンを書籍で学びたい人は[胸部レントゲンを学ぶのにオススメの本、6選【2021年版】]もご覧ください。
また、キャリアアップで最も大事なのは、働く環境だったりします。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。
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