胸部CTでの胸水の特徴と鑑別疾患を解説【胸膜疾患も合わせて説明】 | コキュトレ
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胸部CTでの胸水の特徴と鑑別疾患を解説【胸膜疾患も合わせて説明】

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2021年8月16日 (更新日:2021年8月6日)
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胸部CTでの胸水はどう見えるの?

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胸水があったら原因をどう考えるの?

これらの疑問を解決します。

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

本記事の内容

  • 胸部CTでの胸水の見え方
  • 胸水の鑑別疾患
  • 胸膜肥厚

胸水は慣れると気づくのはさほど難しくないです。でも、実際にどんな原因があるかとなると、結構迷うことが多いです。

ここでは、胸水のCTの見え方でどんな原因が考えやすいかも解説します。合わせて、胸水に似た病気で胸膜肥厚もピックアップします。

この記事を読むと、胸水に気づけるようになったり、どんな原因が考えられるかが分かるようになります。

胸部CTを見る機会がある方は、ぜひ参考にしてみだください。

  1. 胸部CTの胸水の見え方
  2. 胸水の原因
  3. 胸膜肥厚とは?胸部CTでの胸膜疾患の見え方
  4. 胸膜疾患はどんなものがあるか
  5. まとめ

胸部CTの胸水の見え方

胸水がある場所

念のため、胸水をちょっとだけ説明します。分かっている人は飛ばしてください。

胸水は、「肺と肋骨の間に水が溜まった水」です。

胸腔穿刺 手技 合併症 気胸 胸水 膿胸 血胸

もう少し専門用語を使うと、肺を覆っている膜は臓側胸膜と言います。肋骨の裏側と覆っている膜は壁側胸膜と言います。この間のスペースを胸膜と言います。

なので胸水は、「臓側胸膜と壁側胸膜の間にある胸膜腔に貯まった水」です。

場所が肺の外側ということは意識しておいてください。

胸部CTでどう見えるか。

先ほどの説明の通り、肺と肋骨の間に映ります。

そして、肺はCTでは黒っぽく、骨は白く映ります。それに対して胸水はグレー色になります。

実際にご覧ください。

胸部CT、胸水

胸水は、「臓側胸膜と壁側胸膜の間にある胸膜腔に貯まった水」
肺はCTでは黒っぽく、骨は白く、それに対して胸水はグレー色

一枚では不安だと思うので、何枚かお見せします。

胸水のCTで注目する点

胸水の原因を考えるために、CTでどう見えるかに注目します。

これらのポイントが分かれば、なんで胸水が貯まっているのかの手掛かりになります。

  • 両側か片側か
  • 量(中等量?大量?)
  • 被包化されているか
  • 胸膜肥厚があるか

1つずつ見ていきます。

両側か片側か

CTではこのように見えます。

胸部CT、胸水

両側だと、全身性の疾患の可能性が高まります。心不全とか、ネフローゼとか。片側だと、局所的な疾患の可能性が高まります。肺癌とか、肺炎とか。

量(中等量?大量?)

正確に決まっているわけではありませんが、おおまかに以下のように考えます。

  • 中等量:1/3以上
  • 大量:2/3以上

CTではこのように見えます。

胸部CT、胸水

大量の場合は、悪性腫瘍の可能性が高まります。

被包化されているか

胸水の周りが膜で覆われている状態です。

CTではこのように見えます。

胸部CT、胸水

胸水の周りに、やや薄めのグレーの層が覆っているのがわかりますでしょうか。

この場合は、膿胸の可能性が高まります。

胸膜肥厚があるか

先ほど説明した、臓側胸膜や壁側胸膜。

それぞれ、肺を覆っている膜、肋骨の裏を覆っている膜でしたね。これらが腫れているかどうかです。

CTではこのように見えます。

胸部CT、胸水

これはブログ後半で[胸膜肥厚とは?胸部CTでの胸膜疾患の見え方]で説明します。

胸水で注目するのは、両側か片側か、量(中等量?大量?)、被包化されているか

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胸水の見え方は分かったけど、原因はどう判断する?

それでは、その点を解説していきます。

胸水の原因

【悲報】胸部CTのみでは診断できない

いきなり悲報です。胸水のみでは診断はできません。

胸部CTで胸水を発見したら、原因を思い浮かべて、あとは患者背景や他の検査も合わせて診断していきます。

ここの詳細は胸部CTの域を出てしまうので、ここでは鑑別疾患をあげていきます。

胸水の鑑別疾患

これらが上がります。

  • 【漏出性胸水】
    • 静水浸透圧↑:心不全,SVC症候群,収縮性心膜炎
    • 膠質浸透圧↓:低alb,ネフローゼ,肝不全
    • 腹腔から漏出:肝性腹水,腹膜透析,水腎症
    • 甲状腺   :甲状腺機能低下症,粘液水腫
  • 【滲出性胸水】
    • 悪性腫瘍 :癌性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫,悪性リンパ腫
    • 感染症:肺炎,結核,真菌,ウイルス,HIV
    • 膠原病:関節リウマチ,SLE
    • 腹腔内病/変:横隔膜下膿瘍,膵炎
    • 肺病変:肺塞栓,石綿の良性胸水
    • 心臓病変:心筋梗塞後,冠動脈バイパス術
    • 産婦人科:卵巣過剰刺激症候群、卵巣腫瘍(メージュ病)
    • その他:尿毒症,食道破裂,乳び胸,偽性乳び胸,サルコイドーシス,黄色爪症候群

多いですね。

特に大事なものをピックアップすると、こうなります。

  • 【漏出性胸水】
    • 静水浸透圧↑:心不全
    • 膠質浸透圧↓:低alb,ネフローゼ,肝不全
  • 【滲出性胸水】
    • 悪性腫瘍 :癌性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫,悪性リンパ腫
    • 感染症:肺炎,結核
    • 膠原病:関節リウマチ,SLE

このあたりくらいは覚えてよいでしょう。

胸水のみでは診断はできない。胸部CTで胸水を発見したら、原因を思い浮かべて、あとは患者背景や他の検査も合わせて診断する。

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胸水の時の、膜の肥厚に関してもう少し教えて。

胸膜肥厚とは?胸部CTでの胸膜疾患の見え方

肺を覆っている臓側胸膜、肋骨の裏を覆っている壁側胸膜。これらが腫れているのが胸膜肥厚です。

で、この胸膜肥厚、慣れないとなかなか気づかないものです。

ここで、実際のCTをご覧いただきます。

胸部CT、胸膜肥厚

肋骨の真裏の部分をみてください。

正常な箇所では、白い肋骨の内側はすぐに黒くなっています。それに対して、胸膜肥厚の部分では、白い肋骨のうらに薄いグレーの層があるのが分かりますか。

これが、胸膜肥厚です。

いくつかご覧いただいて、目を慣らしていきます。

胸部CT、胸膜肥厚
胸部CT、胸膜肥厚

胸膜肥厚のCTで注目する点

いくつか、胸膜肥厚で注目する点を説明します。

  • 胸膜石灰化
  • 限局性かびまん性か

それぞれ解説します。

胸膜石灰化

胸膜が白く見えます。

石灰化ではプラークなどの可能性が高まります。基本的には良性です。

限局性かびまん性か

一部分のみか、全体的に広がっているかです。

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胸膜が肥厚する病気にはどのようなものがありますか?

では、そこを解説していきます。

胸膜疾患はどんなものがあるか

鑑別疾患としてはこれらが上がります。

  • 非腫瘍性
    •  胸膜炎(結核など感染やリウマチなど)
    •  陳旧性血胸、慢性出血性胸水
    •  石綿症
    •  胸膜プラーク(石綿関連疾患)
    •  アスベストスト以外の原因による線維性胸膜炎
    •  被包化された胸水
  • 腫瘍性
    •  悪性胸膜中皮腫
    •  肺癌、転移性肺腫瘍の胸膜播種

胸水の時と同様に、CTのみでは診断はできません。

胸膜の肥厚を見たら、患者背景や他の所見も聞きます。

肺炎に近いような発熱、喀痰、炎症所見の上昇があれば胸膜炎の可能性が高まります。

職歴などあれば石綿肺、悪性胸膜中皮腫の可能性が高まります。

悪性胸膜中皮腫は、生検をしないと診断できません、疑えば呼吸器外科と相談します。

胸膜肥厚の部分では、白い肋骨のうらに薄いグレーの層がある。 胸膜肥厚では、胸膜石灰化、限局性かびまん性かなどに注目する。

まとめ

では、内容を振り返ります。

  • 胸水は、「臓側胸膜と壁側胸膜の間にある胸膜腔に貯まった水」
  • 肺はCTでは黒っぽく、骨は白く、それに対して胸水はグレー色になります
  • 胸水で注目するのは、両側か片側か、量(中等量?大量?)、被包化されているか
  • 胸水のみでは診断はできない。胸部CTで胸水を発見したら、原因を思い浮かべて、あとは患者背景や他の検査も合わせて診断する。
  • 胸膜肥厚の部分では、白い肋骨のうらに薄いグレーの層がある。
  • 胸膜肥厚では、胸膜石灰化、限局性かびまん性かなどに注目する
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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

以上、参考になればうれしいです。明日からの仕事にぜひ活かしてみてください!

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