結核の胸部CTの所見【結論:疑うことから始まる】※医療者むけ | コキュトレ
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結核の胸部CTの所見【結論:疑うことから始まる】※医療者むけ

  • 医師
  • 放射線技師
  • 看護師
2021年7月15日 (更新日:2021年10月6日)
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この間主治医の先生が胸部CTで結核を疑ってたけど、自分に当たったら不安だなぁ。判断できるか自信がない。

こういった悩みに答えていきます。

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

結核は特に隔離が必要なので、気を遣うことも多いです。疑わしい症例は見つけられるようになりたいですよね。

より自信をもって見られるよう、ここでは結核らしいのはどういうものを言うのかを説明します。

これを読むと、以下のことができるようになります。

  • 結核っぽい所見がわかるようになる
  • 結核っぽくない所見が分かるようになる
  • 他の病気の可能性もわかる

医師以外にもわかるように書きました。胸部CTを見る機会がある研修医、看護師、コメディカルはぜひ参考にしてみだください。

  1. 結論:疑うことから始まる【バリエーションがとにかく多い】
  2. 代表的な所見:空洞、小葉中心性、多発性の腫瘤
  3. 他の鑑別疾患【空洞、多発性の腫瘤を見かけたときに考えるもの】
  4. まとめ

結論:疑うことから始まる【バリエーションがとにかく多い】

結論は、「疑うことから始まるという」ことです。

なんだか分かりづらい結論です。

というのも、結核はバリエーションがとにかく多いので、胸部CTで当てるのが難しいんです。

結核っぽくないCTだったけど、調べたら結核なんてことはよくあります。

結核は、もし周りに菌をばらまいている患者さんなら隔離しなければいけないし、いろいろ気を遣うんです。

胸部CTのみで診断はできない

結核にかぎらずどの病気でも言えることすが、原則として「胸部CTで診断はできません」。

なので、目の前の患者さんが結核患者さんかもしれないと、疑うことから始まるのです。

結核の胸部CT所見はバリエーションがとにかく多いので、疑うことから始まる。
結核にかぎらずどの病気でも言えることだが、原則として「胸部CTで診断はできない」。

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とはいうものの、どんな時に疑うのか教えてほしい。

では、特に代表的な所見を説明します。

代表的な所見:空洞、小葉中心性、多発性の腫瘤

所見を説明する前に、まず結核という病気の経過を簡単に説明します。

結核の経過

一次結核

結核は、最初に感染して、一次結核という状況になります。全員がかかるわけでなく、感染するのも20~50%。その後発病するのも6~7%です。

二次結核

一旦体の免疫に封じ込められたあと、例えば癌になったり免疫が弱った段階で再燃します。これが二次結核です。

発病するのはわずか3%程度。まだ、一次結核から何年~何十年もの時間があいているのが通常です。

結核の胸部CT

代表的なのはこれら。

  • 一次結核:リンパ節腫大
  • 二次結核:空洞病変、小葉中心性、多発性の腫瘤

それぞれ見ていきます。

空洞病変

図でもみるとこうです。

胸部CT、結核、空洞病変
胸部CT、結核、空洞病変

白いく厚い膜に、黒い部分が包まれています。

さらに言うと、周りの肺よりもより色が黒いのが分かりますか。この真っ黒な部分には、周りと違い肺胞などもありません。本当に「空洞」なんです。

長い時間をかけてできた病巣の、中の部分だけ血流などがいかなくて、壊死して抜けてしまってできたものです。

小葉中心性

これはなかなか難しいので、詳しくは[胸部CTで二次小葉から原因疾患を判断する方法【4つに分ければ理解できる】]も参考にしてみてください。

簡単に言うと、「末梢の細い気道の周りにみられる小結節」です。

図で示すとこうなります。

胸部CT、結核、空洞病変

気道の周りに結節ができるのを、木になるつぼみにたとえて「tree-in-bud appearance」と言ったりもします。

肺結核は基本的に気道を伝ってできる病気なので、このように気道の周辺に病気ができるわけです。

多発性の腫瘤

これは、粟粒結核という状態。肺の中にあるようですが、気道を通って結核が広がったわけではなく、肺の血流にのって菌が広がった状態です。

そのため、肺外結核に分けられます。

図ではこんな状態。

胸部CT、結核、空洞病変

ちいさなつぶつぶが、たくさん肺の中にあるのがわかりますでしょうか。

血の流れにのって、肺の中にランダムにできます。

代表的な所見は、一次結核でリンパ節腫大。二次結核で空洞病変、小葉中心性、多発性の腫瘤

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何となくわかったけど、他に紛らわしい病気はない?

他の鑑別疾患【空洞病変、多発性の腫瘤を見かけたときに考えるもの】

胸部CTのみで診断はできない。

最初にも出ましたけど、原則はこれです。結核も、疑うところから始めます。

ということは、他の疾患の可能性も考えるということです。

ここでは、結核を疑う病変があった時に、他に考える病気を紹介します。

覚えるに越したことはないかもしれないですが、全部覚えるのは大変です。

なので、すぐこの記事の情報を取り出させられるようにしておいてください。

その中でも、特に大事なのは書いておくので、それくらいは覚えておいていいでしょう。

空洞病変

これらが考えられる疾患です。

  • 腫瘍性
    •  原発性肺癌(扁平上皮癌)
    •  転移性肺癌
  • 炎症性および感染性
    •  結核
    •  非結核性抗酸菌症
    •  肺化膿症
    •  真菌感染症(アスペルギルス、クリプトコッカス)
    •  寄生虫感染症
    •  肉芽腫性病変(Wegener肉芽種など)

この中でも大事なのが、原発性肺癌、転移性肺癌、結核、肺化膿症、アスペルギルスあたりです。これは思い浮かべられるようになっているといいでしょう。

では、実際のCTを見ていきます。

胸部CT、結核、空洞病変
胸部CT、結核、空洞病変
胸部CT、結核、空洞病変

多発性の腫瘤

これらが考えられる疾患です。

  • 腫瘍性
    •  転移性肺腫瘍
    •  悪性リンパ腫
  • リンパ増殖性疾患
    •  過誤腫
    •  同時多巣性肺腫瘍(細気管支肺胞上皮癌、カルチノイド)
  • 感染性
    •  粟粒結核
    •  非結核性抗酸菌症
    •  敗血症性塞栓症(多発肺膿瘍)
    •  真菌感染(クリプトコッカスなど)
    •  寄生虫(包虫症)

この中で大事なのが、転移性肺腫瘍、粟粒結核、非結核性抗酸菌症あたりです。これは思い浮かべられるようになっているといいでしょう。

空洞病変の鑑別疾患で大事なのが、原発性肺癌、転移性肺癌、結核、肺化膿症、アスペルギルス。 多発性腫瘤の鑑別疾患で大事なのが、転移性肺腫瘍、粟粒結核、非結核性抗酸菌症。

では、実際のCTを見ていきます。

胸部CT、多発腫瘤
胸部CT、多発腫瘤

まとめ

では、内容を振り返ります。

  • 結核の胸部CT所見はバリエーションがとにかく多いので、疑うことから始まる。
  • 結核にかぎらずどの病気でも言えることだが、原則として「胸部CTで診断はできない」。
  • 代表的な所見は、一次結核でリンパ節腫大。二次結核で空洞病変、小葉中心性、多発性の腫瘤
  • 空洞病変の鑑別疾患で大事なのが、原発性肺癌、転移性肺癌、結核、肺化膿症、アスペルギルスあたり。
  • 多発性腫瘤の鑑別疾患で大事なのが、転移性肺腫瘍、粟粒結核、非結核性抗酸菌症あたり。
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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

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もっと得意になりたい

さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。

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勉強会での準備が大変

勉強会の準備って、とにかく大変ですよね。準備自体が自分のためになるのは分かるけど、たいてい10時間以上かかったりするし。

  • 元ネタのパワーポイントをnoteでダウンロードできます。[こちら]からご覧ください。

以上、参考になればうれしいです。明日からの仕事にぜひ活かしてみてください!