喀痰の原因には何がある?
喀痰で行う検査は?
どうやって治療する?
こういった疑問にお答えします。
この記事の内容
- 喀血の原因
- 血痰で行う検査
- 去痰薬について
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
- 2022年 呼吸器内科指導医
この記事では、呼吸器内科12年目の筆者が、喀痰での診療に必要な情報を解説していきます!
日本呼吸器学会の[咳嗽・喀痰のガイドライン2019]を基にしました。医療従事者むけの内容です。担当患者さんに当たった方は、ぜひ参考にしてみてください。
喀痰とは
そもそも、喀痰って何?
ガイドラインを見ると、「下気道から気道外に喀出された気道分泌物の総称」って書かれています。
正常な人でも少しは出るものです。気道表面の細胞から産生されたムチンが主成分で、これに脂質や電解質などが少量まじって出来ます。
機序を詳しくかくとややこしくなるし、実際働いててそんなに必要な知識じゃないです。なのでこの辺りはさほど気にしなくてもOKです!
で、これが各種の疾患で増加して、喀痰という形でたくさん出てくるんですね。
じゃあ、喀痰はどんな病気で増えるの?
次でそこを解説していきます。
喀痰の原因
ガイドラインの表をここでお見せします。
急性上気道感染 | 35% |
急性下気道感染 | 29% |
気管支喘息 | 10% |
COPD | 8% |
不明 | 8% |
肺癌 | 6% |
気管支拡張症 | 2% |
肺塞栓症 | 1% |
結核 | 0.4% |
1位の急性上気道感染は、声帯より上の感染。風邪とか、副鼻腔炎とかですね。2位の急性下気道感染は、声帯より下の感染。いわゆる、肺炎です。
それぞれの病気で、痰の見た目も変わってくるの?
喀痰の見た目で考えること
こちらもガイドラインの表をお見せします。
性状、色調 | 原因疾患 |
粘液性 | 気管支炎、COPD、気管支喘息 |
漿液性 | ARDS、肺水腫 |
膿性 | 気道感染症、肺炎、COPDの増悪、気管支喘息発作 |
緑色 | 緑膿菌感染 |
オレンジ色 | レジオネラ |
鉄さび色 | 肺炎球菌感染症、肺吸虫 |
苺ゼリー状 | クレブシエラ肺炎 |
黒色、褐色 | 真菌 |
鮮紅色、黒褐色 | 血痰、喀血 |
ただ、この色の痰が出たから絶対この病気ってわけじゃありません。逆に、この病気だから絶対この病気ってわけでもありません。あくまで、参考くらいにしておいて下さい。
見た目で判断できないとしたら、どんな検査をしたらいいの?
はい、なので次は検査の内容を紹介します。
喀痰の検査
おもにこんな検査があります。
- 細菌検査
- グラム染色
- 抗酸菌塗抹・培養
- 細胞診
感染が疑わしい時は細菌検査です。
通常の細菌性肺炎ならグラム染色ですね。結核などを疑う場合に抗酸菌塗抹・培養を行います。しっかりと検査できるよう、唾液じゃなくて粘液線分の多い喀痰を頑張って出しましょう。
細菌性肺炎、結核は別の記事で解説しています。よければ参考にしてみて下さい。
肺癌を疑う時に喀痰の細胞診を行うことがあります。ただ、実際には喀痰で悪性細胞が見つかることはそんなに多くないです。ちゃんと検査をするなら、気管支鏡や手術での生検が必要です。
何らかの理由で気管支鏡などが行えない場合とかに、喀痰細胞診はもし陽性になったらラッキーみたいな感覚で行う検査と思っておきましょう。
治療
痰を出すにはどんなものがある?
根本的には、原因となっている疾患を治すことです。
ここではそれとは別に、症状を和らげるための治療を紹介します。
去痰薬
痰きりの薬、去痰薬ですね。
作用 | 治療薬 | 使う場面 | |
粘液溶解 | ムチンを分解して痰の粘調性を低下 | ビソルボン™(ブロムヘキシン)、ムコフィリン™(アセチルシステイン)、ペクタイト™、チスタニン™ | ネバネバでキレが悪い |
粘液修復 | 粘液成分を正常化させる | ムコダイン™(カルボシステイン) | ネバネバでキレが悪い、サラサラで量が多い |
粘液潤滑 | サーファクタント分泌を促進 | ムコソルバン™(アンブロキソール)、ムコサール™(アンブロキソール) | ネバネバでキレが悪い |
杯細胞の抑制 | 痰の分泌を抑える | マクロライド系抗菌薬、クリアナール™、スペリア™ | ネバネバでキレが悪い |
こんなたくさんの情報見せられてもおぼえられないですよね。あと、「ムコなんとか」って名前だらけなの、何とかしてほしいなぁってよく思います(笑)胃薬でも似たようなのがあるし、覚えやすそうで覚えにくいんですよね。
ポイントは、サラサラで量が多い痰はムコダイン™(カルボシステイン)っていうこと。
あと、マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン)は慢性気管支炎に使われるってこともポイントです。例えば肺癌による痰とか、明らかに他の原因がある時には使わないです。胸部CTで気管支炎がある時に使います。
体位ドレナージ
痰のある部分を上に持ってきて、重力に従って痰を口元に持ってくるって方法です。図で示すとこんな感じ。
体位ドレナージは別記事でも解説しています。興味ある方はこちらもご覧ください!
まとめ
それでは内容を振り返ります。
- 喀痰の原因で多いのは急性上気道感染、急性下気道感染、気管支喘息、COPDあたり。
- 見た目から原因は特定できない。
- 状況に応じて細菌検査、細胞診など行う。
- 喀痰の性状に応じて去痰薬を使い分ける。
このあたりが分かれば、喀痰に必要な知識はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
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