結核疑いの患者さんでの感染対策【疑ってから診断までを解説】 | コキュトレ
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結核疑いの患者さんでの感染対策【疑ってから診断までを解説】

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2022年2月8日 (更新日:2022年2月21日)
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こないだ結核の疑いの患者さんがいたけど、感染対策がどうしていいかわからなかった。

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他の人にうつしたりしないかどきどきした。

こういった悩みを解決します。

この記事の内容

  • 結核での感染対策
  • 症状
  • 検査と診断
  • 他の人にうつすかどうか

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

結核は、その患者さんだけじゃなくて周りの人も巻き込むものです。

他の病気に比べて扱いが繊細だから、結核疑いの患者さんがいたとき、どうしていいか分からないとどきどきしますよね。

ここでは、感染対策の方法を解説します。

それだけじゃなく、疑う場面や診断も説明しますので、この記事を読めばうつさないための内容が網羅的に理解できます。

自信がないって人は、ぜひ参考にしてみてください!

  1. 【結論】結核疑いの患者さんでの感染対策
  2. どんな場面で疑うか:症状とリスク因子
  3. どんな検査を行うか
  4. 診断する方法
  5. 他人にうつす可能性がある状況とない状況
  6. 結核をうつされたらどんな経過になるか
  7. まとめ

【結論】結核疑いの患者さんでの感染対策

結核とは 症状 治療 結核菌 感染経路 致死率 検査

結論です。結核疑いの患者さんでの感染対策には、これらがあります。

  • 患者さんはサージカルマスクを着ける
  • 医療従事者はN95マスクを着ける
  • 陰圧室に隔離する

施設によっては陰圧室がない場合もあります。その場合は、一般個室で部屋を閉め切って対応します。そして、使用した後も4時間程度は、換気のため窓を空けて、病室として使用しないようにします。

飛沫感染と飛沫核感染(空気感染)

やっかいなのが、結核が飛沫核感染という、感染しやすいタイプであるということです。

  • 飛沫感染:粒子が直径が5μm以上の水滴で、すぐ落ちる
  • 飛沫核感染:粒子が直径が5μm以下で、飛沫の水分が蒸発したもの。長時間空気をただよう

そのため、飛沫核を吸わないため、医療者はN95マスクにしなければなりません。

患者さんは飛沫を飛ばさないため、普通のサージカルマスクをしてもらいます。

普段からの予防対応のための準備

もちろん、普段から予防対応できるような準備も必要です。厚労省の感染対策の指針にはこのようにまとめられています

  • 感染対策委員会(ICC)及び感染対策チーム(ICT)による組織的対応
  • 院内感染リスクの評価(過去1年間の結核患者診断数、初診から診断までの分析)
  • 院内感染対策指針/マニュアルの作成・運用
  • 結核の予防、感染対策、診断、治療等についての職員教育
  • 医療機関等の実状に応じた優先診療の方法の検討
  • 施設の構造・設備の整備・維持管理(結核患者を収容できる個室の確保・陰圧・HEPAフィルターの維持・管理等)
  • 必要な場合にN95型マスクの着用
  • 職員の定期健康診断受診の励行
  • 患者発生時に保健所と連携した接触者健康診断の実施
出典:結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成 26 年版

結核疑いの患者さんでの感染対策には、①患者さんはサージカルマスクを着ける、②医療従事者はN95マスクを着ける、③陰圧室に隔離するがある。

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どんな場面で結核を疑う?

それでは、症状とリスク因子を説明します。

どんな場面で疑うか:症状、リスク因子、胸部レントゲンやCT

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症状

こんなものがあります。

  • 咳(78%)
  • 体重減少(74%)
  • 倦怠感(68%)
  • 発熱(60%)
  • 血痰(28%)

ただ、どれも他の病気でもおこりえるもの。実際、結核の初期は風邪や肺炎に似ていて、判断はとてもじゃないけど難しいです。

なので、たとえば1か月以上咳や発熱が続くとか、抗生剤で治らない肺炎などの場面で疑い始めます。

あと、例えば症状はないけどCTやレントゲンで疑うって場面もあります。検査所見はこの記事の後半で説明しますね。

リスク因子

リスク因子は免疫力が低下しているような状態。具体的にはこれらです。

  • HIV感染
  • 糖尿病
  • 悪性腫瘍
  • 慢性腎不全
  • ステロイド投与
  • 免疫抑制薬

他にも、暴露のリスクがあったような状態。具体的にはこれらです。

  • 最近の肺結核患者への暴露
  • 麻薬使用者
  • 結核蔓延国(東南アジア・南アジア・アフリカなど)で居住していた

これらの要因があった時に、結核がより疑われます。

レントゲン、CT

結核はいろんなレントゲン、CTの所見になるため、実は一概には言えないんです。

その中でも典型的なものをあげるとこれらです。

  • 典型的な所見:リンパ節腫大、二次結核:空洞病変、小葉中心性の結節(tree-in-bud appearance)
  • 好発部位:肺S1、S2、S6

空洞は、このように中が抜けて見えるもの。

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小葉中心性とは、tree-in-bud appearanceと英語でいいますけど木の芽に例えられます。

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気管を木の枝に例えると、その周りにパラパラと小さい粒のように広がるため、木の芽に似てるって言われます。ただ、最初に言ったように、典型的じゃない画像の方がむしろ多いくらいなので、やっぱり一概に言えないんです。

CTは別の記事[結核の胸部CTの所見【結論:疑うことから始まる】※医療者むけ]でも解説しています。

学会の病型分類

レントゲン所見は、学会で決められた病型分類というものがあります。

書類を提出する時に必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。
結核の病型分類>>結核症のX線病型分類

疑う症状は、咳(78%)、体重減少(74%)、倦怠感(68%)、発熱(60%)、血痰(28%)など。リスク因子は、HIV感染、糖尿病、悪性腫瘍、慢性腎不全、ステロイド投与、免疫抑制薬など。結核は疑うことから始まる!

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疑ったらどんな検査をしますか?

どんな検査を行うか

いくつか種類があるので、最初に列挙します。

  • 細菌検査(塗抹、培養):喀痰、胃液、気管支肺胞洗浄液、骨髄、胸水、脊髄液など
  • 核酸増幅法(PCR)
  • 生検:気管支鏡による肺生検、リンパ節生検、外科的手術による胸膜生検
  • インターフェロンγ法:T-SPOT、QFT(クォンティフェロン)
  • ツベルクリン反応

検査を深入りすると複雑なので、ここでは必要な情報のみを解説します。

細菌検査(塗抹、培養)

塗抹はチールネルゼン染色です。一般細菌は有名なグラム染色なので、それとは違います。

菌の量が少ない時は、塗抹では見えないけど培養で菌を増やすと判明したりします。ただ、培養には数か月ほどかかります。

なので、塗抹陰性かと思いきや数か月後にやっぱり結核だったってこともあります。

核酸増幅法(PCR)

遺伝子を増幅させて調べるやつです。

菌が少なくても、無理やり増やすので検出できたりします。培養では数か月かかるのに比べて、当日結果が出るので便利です。

ただ、手間とコストがかかるので必要な時のみに行います。

菌の種類が同定できるのも利点です。

インターフェロンγ法:T-SPOT、QFT(クォンティフェロン)

血液検査で行いますが、採取した血液に結核菌の抗原を加えて、インターフェロンが検出されるかを見るものです。

難しい言葉が並んで分かりにくいですよね。ざっくり言えば、「結核にかかったことがあれば、体がそれを覚えていて反応してくれる」ってイメージです。

まぁ、分かりにくければ、機序は無視してもらって大丈夫です。

いい検査なのですが、いくつか注意点があります。

  • 結核に感染してから2カ月程度しないと陽性にならない
  • 仮に陽性でも、昔の感染か、今の感染かは区別がつかない

もしT-SPOT™が陰性なら、結核じゃないと言いやすいです。ただ、陽性だったとしても昔の感染のため、今体に悪さをしているかは分からないんですね。

ツベルクリン反応

皮膚に注射して、発赤するかをみるやつです。

機序はさっきのインターフェロン法と似ていて、採血で見るか、皮膚でみるかの違いって思ってもらっていいです。

BCGの影響をうけて陽性になりやすいことや、T-SPOT™の普及などで、ほとんど行われなくなりました。自分も実はやったことはないです。

詳しく見たい人は、こちらを参考にしてみてください。

ツベルクリン反応:宮城県結核予防会

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いろんな検査があるけど、結局どうやって確定診断するの?

診断する方法

結核での確定診断は、「結核菌が検出されること」です。

検出されるのは、痰かもしれないし、気管支鏡かも知れないし、リンパ節生検かもしれません。

ただ、T-SPOT陽性やQFT陽性のみでは、昔の感染を感知していて、現在は発病していない状況です。

発病と感染

ここで、感染と発病というのが出てきました。

結核は、体内にあっても、潜んでいるだけで体に悪さをしないってことも多々あります。むしろ、そっちの方が多いくらい。

  • 感染:体内に結核菌がいるだけで悪影響を及ぼしていない
  • 発病:菌の勢いが強くなり、体の組織を冒していく状態

T-SPOTやQFTが陽性ということは、つまり下の図の状態です。

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T-SPOTやQFTのみでなく、菌が検出されないと「発病」とは見なさなくていいんですね。

・結核での確定診断は、「結核菌が検出されること」。
・注意点として、感染と発病は別ものということ。体内に結核菌がいるだけで悪影響を及ぼしていないのが感染。
・菌の勢いが強くなり、体の組織を冒していく状態が発病。T-SPOTやQFTのみでなく、菌が検出されないと「発病」とは見なさない。

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患者さんから結核菌が検出された!大変!うつされちゃう!

落ち着いてください。他の人にうつすとは限らないんです。

他人にうつす可能性がある状況とない状況

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他人にうつす可能性あり

他人にうつす可能性があるのは、「痰の塗抹で結核菌が検出されること」です。

「培養」じゃなく「塗抹」です。あと、「痰」であって、他のものだったら他人にうつすことは考えません。

日常生活で他人にうつすとしたら、ある程度菌の量が必要です。そのためには、痰の中に培養をしなくても検出できるくらいの結核菌が必要になるんですね。

他人にうつす可能性なし:3連痰が陰性

3日連続で喀痰塗抹で結核菌が検出されなければ、他人にうつす可能性はないと考えます。

これを「3連痰が陰性」などと呼びます

隔離されていた患者さんも解除されます。

ただし、だからもう結核じゃないって訳じゃないです。気管支鏡などでやっぱり結核だったってなるかもしれません。

ただ、気管支鏡のみで結核が見つかっても、他人にうつす可能性は考えません。この場合でも隔離は必要なくなります。

発病?感染性?うつす?【結核の分類まとめ】

ここで、いったん整理します。

  • 感染:結核菌が体内にあるだけで悪さをしていない。T-SPOT陽性だが菌は検出されていない。
  • 活動性結核:結核菌が体に悪さをしている。結核菌が検出されている。
  • 排菌あり:他人にうつす可能性あり。痰の塗抹で結核菌が検出されている。

まとめると、こうなります。

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結核をうつされたらどんな経過になるか

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結核にもし自分もかかったらどんな経過になるの?

最初に言っておくと、大半は発病しません。これは覚えてください。

では、実際に感染するとどうなるのでしょうか。まとめると次の図になります。

まず、結核に曝露した後、感染するのは30%程度です。

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そして、そのまま10%の方が発病します。これが1次結核です。

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発症しなかった90%の方のうち、5~10%の方が発病します。これが二次結核です。例えば、免疫力が低下する(免疫抑制薬、ステロイドの投与、腎不全、糖尿病など)で、結核菌が再活性化して発症しやすくなります。

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まとめると、こんな経過になります。

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100人が曝露したとすると、
→30人が感染
→3人が1次結核
→残り27人のうち、2人くらいが2次結核

肺以外の結核:結核性胸膜炎、結核性髄膜炎、結核性リンパ節炎、結核性脊椎炎、結核性腹膜炎

結核は何も肺だけじゃないです。こんなところにも感染します。

  • 結核性胸膜炎
  • 結核性髄膜炎
  • 結核性リンパ節炎
  • 結核性脊椎炎
  • 結核性腹膜炎

胸水がある場合は、胸腔穿刺をしてみていいでしょう。また、意識障害などがあれば腰椎穿刺をしてみましょう。

まとめ

それでは内容を振り返ります。

結核疑いの患者さんでの感染対策は以下のものがありました。

  • 患者さんはサージカルマスクを着ける
  • 医療従事者はN95マスクを着ける
  • 陰圧室に隔離するがある。

結核は疑うことから始まります。

疑う症状は、咳(78%)、体重減少(74%)、倦怠感(68%)、発熱(60%)、血痰(28%)などです。リスク因子は、HIV感染、糖尿病、悪性腫瘍、慢性腎不全、ステロイド投与、免疫抑制薬などです。

結核での確定診断は、「結核菌が検出されること」です。注意点として、感染と発病は別ものということ。

体内に結核菌がいるだけで悪影響を及ぼしていないのが感染。菌の勢いが強くなり、体の組織を冒していく状態が発病。また、発病していても、必ずしも他の人にうつす(感染性がある)わけではありません。まとめるとこうなります。

  • 感染:結核菌が体内にあるだけで悪さをしていない。T-SPOT陽性だが菌は検出されていない。
  • 活動性結核:結核菌が体に悪さをしている。結核菌が検出されている。
  • 排菌あり:他人にうつす可能性あり。痰の塗抹で結核菌が検出されている。

以上、参考になれば幸いです。

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

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この記事は[結核診療ガイド/日本結核病学会]を参考にして書きました。