在宅酸素を始める患者さんの看護はどこに注意したらいい?
在宅酸素を始めると生活はどうなるの?お風呂は入れる?飛行機は?
費用を患者さんに聞かれたけど答えられなかった…
こういった疑問にお答えします。
この記事の内容
- 在宅酸素の看護の注意点
- 在宅酸素での機器の種類
- 費用や、申請したらもらえる補助
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
慣れている人はいいのですが、普段やらないのにいきなり在宅酸素の導入を受け持つことになったって人、いると思います。
ここでは、在宅酸素の看護の注意点から、全般的な知識まで網羅的に解説します。
ここが分かれば、患者さんに何か聞かれても、ばっちり答えられるようになります。
Youtubeでもさらに詳しく解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!
在宅酸素療法での看護の注意点【トラブルなく在宅へつなげられる】
火気厳禁
まず、酸素はそれ自体は燃えませんが、他の物を燃やす作用があります。
在宅酸素とタバコに関連した事故は実際に起きています。実験動画も、興味があればご覧になってください。
火気厳禁なので、注意点としてはこのあたりになります。
- タバコを吸わない
- 火を使う料理をしない
- そのほかの火気(線香、ろうそくなど)に近づかない
- 火気を使用しているところから、2m以上はなれる
機器自体の注意点
酸素濃縮器も機械なので、このような注意点があります。
- 水がかからないところに設置する
- 風通りのよい場所に設置する
- 傾斜や不安定な場所には設置しない
- 日光の当たらないところに設置する
- 壁から15cm以上離す
- たこ足配線を使用しない
患者の病状の注意点
この後の看護計画[在宅酸素療法における看護計画]とも重複しますが、病状の悪化に備えて以下のことも注意します。
- 呼吸状態の悪化がないか
- SpO2の低下がないか
- 緊急用の酸素ボンベを装置のそばに置く
- 高CO2血症の患者では、CO2ナルコーシスの症状(意識障害、呼吸回数の低下、発汗、頭痛など)がないか注意する
生活での注意点は別記事でも解説しています。
在宅酸素療法における看護計画
目標は、在宅酸素を患者さんに理解してもらう、在宅で適切な管理をする、症状や合併症を管理するってあたりでしょう。
それでは、観察項目(OP)、ケア項目(CP)、教育項目(EP)に分けて列挙していきます。
観察項目(OP)
- バイタルサイン
- 呼吸状態:呼吸数、喘鳴、呼吸リズム、呼吸困難の有無
- SpO2
- チアノーゼの有無
- 採血や血液ガスといった検査所見
- 感染兆候の有無
- CO2ナルコーシスの徴候(呼吸数、意識状態、頭痛、発汗)
- 胸部X線
- 酸素流量や濃度
- カニューレがずれたり、正しく装着されているか
- 酸素チューブが曲がっていたり、詰まっていたりしないか
- 心不全の徴候(体重の増減、浮腫)
- 心理・社会的側面、ストレスの蓄積
ケア項目(CP)
- パルスオキシメーターでSpO2を定期的に測定する
- 必要に応じて喀痰の喀出をしてもらう
- 安楽な体位を工夫する
- 適切に酸素を吸入してもらう
- 処方されている薬物の吸入(携帯型の吸入器、もしくはネブライザー)
- 定期的にPaO2・PaCO2の測定を行いながら効果と流量の適否を評価する
- 患者やその家族が酸素管理を正しくできるか評価する
- 介護保険制度や身体障害者手帳など、社会保障制度の利用
教育項目(EP)
- 体位ドレナージや排痰の指導を行う
- 起坐位やファーラー位などの体位の取り方について説明する
- 腹式呼吸や口すぼめ呼吸等のやり方を指導する
- 周囲からの協力が得られるように、患者の病状や状態が増悪した時の対処法について説明を行う
- 酸素療法の意味、機器の取り扱い、合併症やその徴候、病院や酸素ボンベの業者との連絡方法について説明し、理解が得られるようにする
- 感染徴候がみられた場合、早めの受診をしてもらうよう説明する
- 低酸素血症・高二酸化炭素の症状についての具体的な説明を行い、状況次第では直ちに受診するよう説明する
- 在宅酸素での不安や質問を聞き、不安の軽減を行う
在宅酸素療法とは
ここから、在宅酸素の内容をおさらいしていきます。
適応基準
適応基準になる状態は、以下のものがあります。
- 高度慢性呼吸不全(PaO2≦50mmHg、もしくはSpO2≦90%)
- 肺高血圧症
- 慢性心不全
- チアノーゼ型先天性心疾患
- 重度の群発頭痛の患者
効果
在宅酸素療法にはこういった効果があります。
- 呼吸困難の軽減
- 低酸素血症の改善
- QOLの改善
- 肺高血圧症の予防
- 生命予後の改善
機器やボンベの種類
在宅酸素では自宅に設置する機器と、外出用の酸素ボンベの2種類を準備します。
- 自宅に設置する機器
- 酸素ボンベ
酸素を吸うものは、たいていカニュラです。酸素流量が多い時にはオキシマイザーなどを使うこともあります。
費用
令和3年の時点で、在宅酸素の医療での費用はで以下の通り。
- 1割負担:毎月7,680円
- 2割負担:毎月15,360円
- 3割負担:毎月23,040円
酸素濃縮器の電気代がこれらに合わせてかかります。
申請したらもらえる補助(身体障害者手帳、介護保険)
在宅酸素療法を受けている患者さんは、社会的に補助が得られます。主なものは身体障害者手帳と介護保険。
制度の詳細は長くなるので、簡潔にまとまっているこちらを参考にしてみてください。
在宅酸素指導の管理料
病院が取れる加算・コストはこれらです。
- 在宅酸素療法指導管理料:2500 点 月1回
- 酸素濃縮装置加算:4000 点 3カ月に3回
- 酸素ボンベ加算(携帯用酸素ボンベ):880 点 3カ月に3回
- 呼吸同調酸素供給器加算:300 点 3カ月に3回
液体酸素の場合は、「酸素濃縮装置加算」が「設置型液体酸素装置加算」で、3970点になります。
まとめ
というわけで、在宅酸素に関わる看護での注意点や、在宅酸素の基本知識を見ていきました。
より詳しく見たいという人は、下の別記事でも詳し目に解説していますので、参考にしてみて下さい。
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
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