嚥下機能評価の方法が詳しく知りたい。
嚥下機能訓練の方法も知りたい。
こういった方へ向けた記事です。
この記事の内容
- 嚥下機能評価
- 嚥下機能訓練
- 嚥下のしくみ
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
言語聴覚士の方は詳しいですが、医師や看護師は嚥下機能評価を詳しくは知らないって人も多いと思います。
ここでは、嚥下機能評価、訓練にどんなものがあるかを網羅的にまとめました。
普段、誤嚥性肺炎の患者さんに関わるって方は、ぜひ参考にしてみてください!
なお、誤嚥性肺炎も別記事[誤嚥性肺炎の症状、要因、予防法、治療【絶食、抗生剤だけじゃない】]で詳しく解説していますので興味があればご覧ください。
嚥下機能評価の検査方法
嚥下機能評価の方法が詳しく知りたい。
以下のものがあります。
- スクリーニングテスト
- 反復唾液嚥下テスト法(RSST)
- 水飲みテスト
- フードテスト(食物)
- 嚥下造影検査(Videofluoroscopic eamination of swallowing; VF)
- 嚥下内視鏡検査(VE)
ひとつずつ見ていきます。
スクリーニングテスト
反復唾液嚥下テスト法(RSST)
30秒の間に唾液の嚥下を続け、何回嚥下ができるかを確認する方法です。3回以上であれば正常です。
水飲みテスト
3mlの水を使って行う方法です。
3mlの嚥下が問題なくできれば、 座位で30mlの水を通常通り飲んでもらいます。5秒以内で問題なく飲むことができれば正常範囲です。
5秒以上かかるとか、2回以上に分けなければならなかった場合は異常ありと判断します。
フードテスト(食物)
とろみ水や、半固形のプリンやゼリーをスプーンで食べてもらう方法です。
嚥下反射の有無、飲み込み、呼吸の変化などを観察し、評価します。
嚥下造影検査(Videofluoroscopic examination of swallowing; VF)
レントゲン室でレントゲン撮影をしながら嚥下を検査するものです。バリウムを混ぜた水や食べ物を実際に食べてもらい、その一連の流れを記録することで、口から胃に運ばれる様子を見ることができます。
方法は以下の通り。
・口腔内の清拭、湿潤を確認する
・ギャッジアップの角度は普段摂食している体位で行う
・40~50%の希釈硫酸バリウムを使用し、最初は1ml程度で徐々に増やしていく
・頸部は軽度前屈胃を基準として、適宜回旋や進展での影響も見る
・側面と正面の透視画像を記録する
あと、食事の様子を見ることによって、どのようにすれば誤嚥を減らせられるか分かるので、治療の意味もあります。体幹や頸部前屈、回旋の角度を調整したり、食事の内容や量の調整も行ったりします。
「嚥下造影の標準的検査法(詳細版) / 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会案 作成に当たって」で詳しく見れるので、さらに知りたい人は参考にしてみてください。
嚥下内視鏡検査(Videoendoscopic examination of swallowing; VE)
内視鏡(経鼻ファイバースコープ)を喉に挿入し、トロミ水やゼリー、食べ物を飲み込んでもらい、飲み込みの様子を観察します。
飲み込んだ後に食べ物が咽頭に残っていないか、食べ物が気管に入らないか(誤嚥)などを評価することができます。声帯の動きも評価することができます。
この結果をもとに、患者さんの食事形態や姿勢の調整、嚥下訓練などを行い、経口摂取を回復させるための計画も立てることができます。
詳しく見たい方は「嚥下内視鏡検査の手順 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会」もご覧ください。
嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査の長所、短所
この2つはどちらが優れているというわけでなく、それぞれ長所・短所があります。
嚥下造影検査
- 長所:口腔、食道の動きも見ることができる
- 短所:被爆がある。手間がかかる。粘膜の変化、声帯麻痺、唾液貯留などはわからない。
嚥下内視鏡検査
- 長所:被爆がない。手軽にしやすい。粘膜の変化、声帯麻痺、唾液貯留なども分かる。
- 短所:口腔内、食道の動きはわからない。嚥下の瞬間がホワイトアウトして見えない。
嚥下機能評価の方法には、スクリーニングテストとして反復唾液嚥下テスト法(RSST)、水飲みテスト、フードテスト(食物)があり、あとは嚥下造影検査(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)がある。
嚥下機能訓練の方法①直接訓練
嚥下機能を訓練する方法にはどんなものがあるの?
いろいろあります。大きくは直接訓練、間接訓練に分かれます。
直接訓練とは、食べ物を用いて直接嚥下を行う訓練です。内視鏡でなどで嚥下機能がある程度評価された患者さんに行います。
食事内容や姿勢で誤嚥の防止を測りながら、段階的に食事をアップしていきます。食事でムセや痰の増量が増えるかどうかなどを評価します。
嚥下機能訓練の方法②間接訓練
食事を使わずに、嚥下器官に対する訓練やリラクゼーションを行います。具体的にはこんなものがあります。
- 肩・頸部・口腔器官の運動
- 嚥下体操
- 舌や頬・唇の体操
- ブローイング訓練
- 声帯を閉じる
- プッシングエクササイズ
- 腹式発声
- 声門閉鎖嚥下(息こらえ嚥下)
- 嚥下反射誘発
- のどのアイスマッサージ
- Kポイント刺激法
- 喉頭挙上+食道入口部開大
- 頭部挙上訓練
詳しく見ていきます。
肩・頸部・口腔器官の運動
肩や頸部の可動域制限がある場合にはストレッチや筋力強化を行ったりします。舌や唇なども同様です。
ブローイング訓練
唇を閉じる力が弱い場合などでは、コップに入れた水をストローで吹くといった訓練を行います。
声帯を閉じる
プッシングエクササイズ
壁などを掌で強く押しながら、喉に力を入れて「あー」などと発声します。
反回神経麻痺などで声帯が閉じにくい場合に、動きがいい側の声帯をより動かすことができます。
腹式発声
発声を行い、間接的に嚥下に必要な筋肉を鍛えます。嚥下と発声で使う器官が同じだからできることです。
声門閉鎖嚥下 (息こらえ嚥下)
唾液を飲み込む練習をします。しっかり息をこらえてから嚥下をして、その後に咳払いをします。
嚥下の時の声門下の圧を挙げることで誤嚥を防いだり、嚥下の後で咳を意図的に行うことで、誤嚥物を確実に出します。
嚥下反射の誘発
のどのアイスマッサージ
凍らせた綿棒の先を、軟口蓋、舌の奥、咽頭後壁などを刺激して、口をとじて嚥下するように促します。
Kポイント刺激法
臼後三角の後部・内側(Kポイント)を綿棒などで刺激します。口を開けやすくなったり、嚥下反射を刺激できたりします。
喉頭挙上+食道入口部の開大
頭部挙上訓練
仰臥位になって、頭をあげて足の先を見るようにします。嚥下に必要な咽頭部の筋力の強化したり、食道の入口部を開けます。
嚥下機能訓練には、直接訓練、間接訓練がある。
嚥下機能低下の解剖生理
最後に、嚥下機能がどうやって低下するかということも知りたい。
では、嚥下のしくみと、嚥下機能低下の原因を見ていきます。
嚥下のしくみ
先行期
食べ物を目で見て認識して、食べ方を判断したり唾液の分泌を促す時期です。
例えば、アルツハイマー型認知症では嚥下機能の障害は少ないですが、空腹なのに口を開けようとしなかったりすることがあります。
準備期
食べ物を噛んで、食べやすい形にする時期です。
歯や舌がメインです。この部分の感覚が衰えていたり、かみ合わせが悪かったりすると、大きい固まりのまま飲み込んで喉を詰める可能性があります。
あとは、脳梗塞などで偽性球麻痺があると、準備期が障害されることがよくあります。
口腔期
食べ物を口腔から咽頭に送り込む時期です。舌から咽頭部がメインの働きを担います。
舌は前から後ろに動いて食べ物を喉に送ります。喉と鼻の間にある軟口蓋が上に挙がって、食べ物が鼻に流れ込まないようにもしています。
準備期と同じく、偽性球麻痺などでは口腔期の障害がよく見られます。
咽頭期
食べ物を咽頭から食道に送り込む時期です。
反射的に咽頭蓋が気道の入り口を塞いで、気道に食べ物が流れ込まないようにされます。
食道期
食べ物が食道から胃に送り込まれる時期です。
食道の筋肉が収縮して、食べ物が胃に戻らないようにしています。
これらのどこかでの機能が衰えると、嚥下がうまくいかなくなり誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
嚥下機能低下の原因
誤嚥性肺炎を引き起こしやすい原因は、高齢、脳卒中、神経筋疾患などです。
詳しくは[別記事]で解説していますので興味があればご覧ください。
嚥下には先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期に分かれ、これらのどこかで衰えると嚥下がうまくいかなくなる。誤嚥性肺炎を引き起こしやすい原因は、高齢、脳卒中、神経筋疾患などがある。
まとめ
それでは、内容を振り返ります。
嚥下機能評価の方法には、スクリーニングテストとして反復唾液嚥下テスト法(RSST)、水飲みテスト、フードテスト(食物)があり、あとは嚥下造影検査(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)がありました。
それぞれ、長所と短所があるので目的に応じて選んでいきます。
嚥下機能訓練には、直接訓練、間接訓練、口腔ケアがあります。
嚥下には先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期に分かれ、これらのどこかで衰えると嚥下がうまくいかなくなります。誤嚥性肺炎を引き起こしやすい原因は、高齢、脳卒中、神経筋疾患などがあります。
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
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オススメの本はない?
- 結核を書籍で学びたい人は[誤嚥性肺炎を学ぶのにオススメの本5選【2022年版】]もご覧ください。
この記事は[誤嚥性肺炎50の疑問に答えます/金芳堂][嚥下障害、診られますか?/羊土社]を参考にして書きました。