胸腔ドレナージの手技、手順ついて【10年目の呼吸器内科が解説】 | コキュトレ
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胸腔ドレナージの手技、手順について【10年目の呼吸器内科が解説】

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  • 看護師
2021年5月12日 (更新日:2021年11月13日)
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胸水ドレーンの留置は本で読んだけど、うまくできなかった。何かコツがあるの?

こういった疑問を解説します。

この記事の内容

  • 胸腔ドレナージの手技
  • 胸腔ドレナージの穿刺部位
  • 胸腔ドレナージの合併症、適応、禁忌

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

胸腔ドレーンの留置は何回かやらないと慣れないですよね。

自分も研修医のころはうまくできませんでした。でも、何十回もやると、本では書いていないようなコツがあるのに気づきます。

ここでは上手くできるように、手順だけじゃなくコツや、合併症や禁忌など周辺の情報も解説していきます。

胸腔ドレーンの留置を時々しかやらない人は、ぜひ参考にしてください!

  1. 胸腔ドレナージの手技を詳しく解説【本では書いてないコツ付き】
  2. 胸腔ドレナージの部位の決め方
  3. 胸腔ドレナージで知っておくべき点【合併症、適応、禁忌】
  4. まとめ

胸腔ドレナージの手技を詳しく解説【本では書いてないコツ付き】

動画でみるのがイメージしやすいと思います。こちらをご覧ください。

では、解説していきます。

準備物品

まずは準備物品がこちらです。

  • 清潔:滅菌手袋、消毒液、穴あき滅菌ドレープ、滅菌ガウン、キャップ
  • 局所麻酔:キシロカイン、23Gの針、10mlの注射器
  • ドレーン留置の関連:トロッカーカテーテル(トロッカーアスピレーションキット)、メス、鑷子、ペアン、コッヘル、布鉗子
  • その他:マーカーペン、固定用の針・糸、滅菌ガーゼ

姿勢

いよいよ、実践に移ります。

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胸腔ドレーンは臥位で行います。邪魔になりそうなら腕をあげてもらいます。
大量胸水の場合は、仰臥位なら胸水があふれ出る可能性があるため、患側を上にしましょう。

モニター

SpO2、HRくらいはモニターしましょう。

消毒

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消毒し、穴あきドレープをかけます。

皮下の局所麻酔

痛覚があるのが皮膚と胸膜なので、この2か所を麻酔します。

まずは皮膚から。

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23Gなどの細い針で、膨疹ができるようにキシロカインを注入します。あとで縫合する時の範囲も含めて麻酔しておきましょう。

先に麻酔をしてからその間に他の物品を準備すると、麻酔が効いてきたころに本穿刺に移れます。

胸膜の局所麻酔

局所麻酔のシリンジを垂直に刺し、陰圧をかけながらゆっくり壁側胸膜まで進めます。

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肺を刺さないよう、少しずつ進めてください。

胸腔内に到達したら、胸水の場合は水を、気胸の場合はエアーを確認できます。

そうしたら、シリンジ全体をやや引いて、針の先端が胸腔内にいかないような状態で胸膜を麻酔します。

なお、胸水が返ってきたときの針の長さを確認すれば、次の剥離の深さの目安になります。

仮穿刺で胸水が返ってきたときの針の長さを確認すれば、次の剥離の深さの目安になる

皮膚切開

皮膚切開を行います。肋骨上縁に沿って2cmくらいです。

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肋骨下縁は血管や神経があるので、かならず上縁です。

肋骨下縁は血管や神経があるので、ここは切り開かない

剥離

ペアンで剥離していきます

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この時に大事なのが、仮穿刺と同じ場所・角度です。むしろ、胸腔ドレーン留置でもっとも大事といっても過言ではありません。

骨に当たらない限りは角度は変えません。

慣れないとなかなか胸腔に到達しませんが、ここで角度を変えると皮下気腫のもとになります。

仮穿刺を信じて、一カ所集中でいきましょう。

仮穿刺と同じ場所・角度で剥離をしていく。

また、ペアンの先端が胸腔内に少し入ったくらいでは、胸膜の穴が小さすぎて後でドレーンが入りません。

ある程度ペアンで胸膜の穴を広げておきましょう。

ペアンの先端が胸腔内に少し入ったくらいでは、胸膜の穴が小さすぎて後でドレーンが入らない。

ドレーンを留置

胸腔内まで到達したら、ドレーンを留置します。

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内筒の先端は尖っています。外筒の先から内筒が出ないように注意しましょう。

気胸の場合は腹側、胸水の場合は背側を狙っていれます。

内筒の先端は尖っているため、外筒の先から内筒が出ないようにする

胸腔内に入ったか確認

時々、胸腔ではなく皮下に入るケースがあります。そのため胸腔内にちゃんと入っていることを確認します。

胸水の場合は水が返ってくるから分かりやすいです。

気胸の場合は以下の方法で確認します。

  • ドレーン内が曇る(Fogging)
  • ドレーンから空気の出る音がする

ドレーンバッグと接続

接続部をイソジンなどで消毒しておきましょう。

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縫合固定

皮膚と縫合固定します。ドレーンの両脇をそれぞれ縫合し、ドレーンに巻き付けます。

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テープを貼る

テープ固定はいろんな方法があります。施設で決まっていたらその方法にしましょう。

テープ固定の方法は絶対的なものはないですが、コツとしてはこれらです。

  • 刺入部をガーゼとテープで固定
  • ずれないよう強めに、刺入部から離れた場所をもう1箇所固定
  • タイガンで結合部固定
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レントゲンで位置を確認

最後にレントゲンで位置を確認します。

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2方向からとって、腹側か背側か見るのが理想的です。

排液は一度に1Lまで

廃液の量は一度に1Lまでにしましょう。これは、再膨張性肺水腫を予防するためです。

廃液の量は一度に1Lまで。

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流れは分かった。他に気を付けるポイントはある?

では、気を付けるポイントとして、ドレーン留置する部位を見ていきます。

胸腔ドレナージの部位の決め方

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部位の決め方にはいくつか決め方があります。

胸水・膿胸の場合の決め方

CTで見たあと、エコーで確認します。

胸水の場合は直前にエコーで黒く見えるのを確認します。安全にドレーン留置するため胸水の量は30mm程度は欲しいところです。

気胸の場合の決め方

状態が落ち着いている場合

胸部CTで先に確認してから行う方がいいでしょう。エコーという方法もありますが、慣れていないと難しいです。

意見はあるかもしれませんが、落ち着いていたら胸部CTをとるのが望ましいと私は考えます。

緊急事態(緊張性気胸など)

胸部CTを取りに行く時間もない場合は、ドレーンではなく第2肋間鎖骨中線上をサーフロー針などで急いで穿刺します。

胸水:CTとエコーで確認
気胸:状態が落ち着いていればCTで確認。緊急なら第2肋間鎖骨中線上

肋骨上縁

肋骨の下縁には動脈やら神経があるので、
それを避けて上縁を刺します。

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肋骨下縁は刺さない

胸腔ドレナージで知っておくべき点【合併症、適応、禁忌】

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合併症にはどんなものがある?

合併症、適応、禁忌も知っておくといいでしょう。

これは、胸腔穿刺と共通します。詳しくは胸腔穿刺について書いた[胸腔穿刺の手技、部位、注意点ついて【10年目の呼吸器内科が解説】]にまとめてあります。こちらも参考にしてみてください。

まとめ

では、内容を振り返ります。

  • 適応:診断としては原因不明の胸水、治療としては気胸、胸水、膿胸、血胸
  • ドレーン留置部位の決め方:胸水はCTとエコーで確認、気胸では状態が落ち着いていればCTで確認し、緊急なら第2肋間鎖骨中線上
  • 肋骨下縁は刺さない
  • 合併症:気胸、血胸、再膨張性肺水腫、肝脾損傷、感染
  • 禁忌:絶対的な禁忌はないが、相対的禁忌として胸腔ドレーン留置をためらう場面は、出血性疾患または抗凝固状態、胸水が非常に少ない、激しい咳嗽、姿勢が取れない

このあたりが分かれば、胸腔ドレナージの手技はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!

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何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

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もっと気軽に見たい

もっと気軽に見られるよう、Instagramでも投稿しています。

  • Instagramでの投稿はこちらからご覧ください。
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もっと得意になりたい

さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。

この記事は[Up To Date / Thoracostomy tubes and catheters: Placement techniques and complications]も参照して書きました。