今度病棟で気管支鏡の入院が始まったけど、実際なにするのかな。うまくできるかな。
こういった疑問を解決します。
この記事の内容
- 気管支鏡の入院での看護手順
- 気管支鏡に必要な知識:適応、合併症、禁忌
執筆者:ひつじ
- 2009年 研修医
- 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
- 2017年 呼吸器内科専門医
ここでは、実際に呼吸器内科として働いている筆者が、入院の手順や、気管支鏡の内容を解説します。
この記事を読めば、気管支鏡の入院に必要な知識が一通りマスターできます。
病棟で気管支鏡の入院がある方は、ぜひ参考にしてみてください!
気管支鏡の入院での看護手順を完全解説
気管支鏡前日
以下が行うべきことです。
- 抗血栓薬を飲んでいないかを確認
- 糖尿病の状況を確認
- 喘息がないかを確認
- 検査の内容を説明
気管支鏡の検査直前
以下が行うべきことです。
- 絶飲食についての確認(直前の食事が絶食)
- 血管のルートを確保
- 義歯や眼鏡は外しておく
- バイタルサインのチェック
- 糖尿病の薬、インスリンは、欠食の時は止める
検査直前の食事は絶食。そのため、インスリンなどは要確認。
抗血栓薬を飲んでないかも注意。
内視鏡室にて
まず、検査を動画で見てもらうのが早いです。英語で申し訳ないですが、聞き取れなくても大丈夫。なんとなく何をしているが分かればいいので。2分30秒あたりまでご覧ください。
以下の流れで検査が進みます。
検査前
- 喉の麻酔:局所麻酔剤(キシロカイン)のスプレーでのどと気管の麻酔を行う。
- 検査台に横になってもらう
- バイタルサインの確認
- マウスピースと目隠し
- 静脈麻酔:検査直前にミダゾラムなど
- 場合によって、喀痰をおさえるため硫酸アトロピンを注射することがあります
検査中
検査は20~30分程度です。
バイタルサインおよび一般状態の観察をします。
検査後
検査後は麻酔を覚ますためにアネキセートを注射します。
病棟からの迎えがあるので、申し送りをします。
帰室後
- 血痰、呼吸困難、胸痛などの有無を確認
- ミダゾラムを使用した後なので、2時間は安静
- 喉に麻酔が効いているので、2時間は絶飲食
- その後は少量の飲水をためし、ムセがなければ飲食の許可を出す
- 異常がなければルートを抜去
なお、検査当日は一過性に発熱が出ることがあります。
検査に伴うものが多いですが、時々肺炎を併発していることがあります。寒気や痰などにも注意しましょう。
生検を行った場合は血痰が出ることがあります。ティッシュにつくくらいなら問題ないですが、大量喀血の場合、SpO2の低下がある場合は医師に報告しましょう。
喉に麻酔が効いているので、2時間は絶飲食。
検査直後は一過性に発熱、血痰がでることがある。
流れは分かったからとりあえず動くことならできそう。気管支鏡についてもう少し詳しく教えて。
では、必要な知識を解説します。どんな患者さんが適応になるか、検査の種類、合併症、禁忌をそれぞれ見ていきます。
気管支鏡の適応
気管支鏡を行う疾患は以下のものが多いです。
- 肺癌:数mm程度の組織を採取します。経気管支生検といいます。
- 間質性肺炎:BAL/TBLBというものをします。BALは、肺に生食150mlを入れて回収します。TBLBは、数mm程度の肺組織を採取します。
- 結核疑い:結核を疑う影に、生食や鉗子を使って検体を取ってきます。
- よく分からない喀血:CTで異常がない場合です。気管支の内腔を観察するのみで、異常がなければ生検はしません。
- 異物誤飲:豆や歯など多いです。鉗子で回収します。
肺癌が一番おおく、その次に間質性肺炎、結核の疑い・・・と思ってください。
気管支鏡の検査の種類
同じ気管支鏡といっても、これらの種類があります。
肺癌の疑いに対して行うもの
- 経気管支生検:病変部を鉗子で採取する
- 擦過細胞診:病変部をブラシなどでこすり取る
- 洗浄細胞診:病変部に生食20mlを入れて回収する
- 超音波気管支鏡(EBUS):気管支鏡用の調音波を用いて行うことがある
間質性肺炎に対して行うもの
- 気管支肺胞洗浄(BAL):肺の中に150ccの生理的食塩水をいれて洗ったものを回収する
- 経気管支生検(TBLB):病変部を鉗子で採取する
内視鏡室の看護師さんは知っておいてください。
病棟看護師さんでも、検査によって起きやすい合併症が変わってくるのは知っておいてください。
肺癌に対して行うものは、組織をとるので喀血の合併症が増えます。
間質性肺炎に対して行うものは、BALで生食をいれるので低酸素血症が増えます。TBLBでは肺の外側ギリギリを狙うので、気胸が増えます。
気管支鏡の合併症
合併症として以下のものがあります
- 低酸素:特にBALでは150mlの水を入れるので、一時的な低酸素はよく起こります。数日で自然と良くなります。
- 大量喀血:ティッシュに少しつくくらいのやつはよくありますが、その日のうちに治ります。大量になると致死的になることがあります。
- 気胸:特にTBLBでは、肺の外側を鉗子で噛むので、気胸が起こりやすいです。
- 肺炎:処置に伴って、一過性の発熱が当日か翌日は良く見られます。あまりに痰がふえたりすると肺炎を疑います。
- 一過性の発熱:当日か翌日に、検査に伴う熱が出ることがあります。
肺癌に対して行うものは、組織をとるので喀血の合併症が増える。間質性肺炎に対して行うものは、BALで生食をいれるので低酸素血症が増え、TBLBでは肺の外側ギリギリを狙うので、気胸が増える。
気管支鏡の禁忌
以下のものが禁忌です。ただし、場合によって注意しながら行うこともあります。
- 重度の呼吸不全:酸素4L程度ならいいですが、そこを超えると挿管の可能性が出てきます
- コントロール不良の喘息患者:検査中に悪化する可能性があります
- 出血傾向(抗血小板・抗凝固療法中)
まとめ
では、内容を振り返っていきます。
- 検査直前の食事は絶食。そのため、インスリンなどは要確認。抗血栓薬を飲んでないかも注意。
- 喉に麻酔が効いているので、2時間は絶飲食。
- 適応疾患は肺癌が一番多くく、その次に間質性肺炎、結核の疑い・・・という順番。
- 肺癌に対して行う生検では、組織をとるので喀血の合併症が増える。間質性肺炎に対して行う検査では、低酸素血症、気胸が増える。
このあたりが分かれば、気管支鏡での入院対応はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!
何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。
というわけで、クイズを用意してみました。
もっと気軽に見たい
もっと気軽に見られるよう、Instagramでも投稿しています。
- Instagramでの投稿はこちらからご覧ください。
もっと得意になりたい
さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。
- 呼吸器内科などを書籍で学びたい人は[呼吸器内科を学ぶのにオススメの本、9選【2021年版】]もご覧ください。
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この記事は[Up To Date / Flexible bronchoscopy in adults: Overview]も参照して書きました。